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新戦術の副産物。
~高さを“諦めた”女子バレー~ 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byGetty Images

posted2014/09/22 10:00

新戦術の副産物。~高さを“諦めた”女子バレー~<Number Web> photograph by Getty Images

主将を務める木村沙織はWGP決勝ラウンドの前日に28歳の誕生日を迎えた。

 バレーボールのワールドグランプリ(WGP)で女子日本代表は初のメダルを獲得した。それも銀メダルで、9月23日開幕の世界選手権を前に、手応えのある成績を残した。

 WGPは1993年から毎年夏に行われており、世界ランキングの上位国によるリーグ戦である。五輪、世界選手権、W杯の開催年にもその前に行われ、三大大会の前哨戦という性格を持っている。日本が取り組んでいる新しい戦術については、テレビ中継でもずいぶん紹介されたから、耳にした人も多いだろう。「ハイブリッド6」と命名され、ちょっと演出過剰に思えた人もいたかもしれない。

 だが、眞鍋政義監督が採用したこの戦術は、日本が、ある意味では必然的に続けてきた、世界の強豪国に対抗する「高さ」へのキャッチアップをすっぱり諦めたという意味で、やはり画期的なものだ。そしてWGPで結果を出したことで、リオデジャネイロ五輪に向けたチームの方向性は明確になったと言える。

レフト攻撃の偏り、木村沙織への依存が軽減された。

 今回の新戦術は、2009年以来の強豪国との対戦データを徹底的に調べ、金メダルを争う国とはミドルブロッカー(MB)2人の得点力の差が大きい、という結論を得たところから始まっている。「高さ」の断念によって失うブロック力は、俊敏で技術の高い選手による多彩な攻撃で、補って余りあるはずだ――この仮説は、WGPファイナルの5試合で、ある程度証明されたと言っていいだろう。

 昨年のこの大会で、MBのポジションに入っていたのは187cmの岩坂名奈、183cmの大竹里歩らだった。新戦術において、こうした長身のMBは入っていない。「センターでブロックに跳び、攻撃時は基本的に速攻」という従来のMBではなく、MBのポジションにも、バックアタックも含めてどこからでも打てるアタッカーを起用した。

 その結果、レフトからの攻撃に偏りがちだったロンドン五輪までと比べてレフト、センター、ライトと攻撃がより分散され、エース木村沙織にかかる負担が減ったことなど、すでに成果が表れている。スパイクによる得点、失点の分析は、今後、チーム内でも詳細に行われ、世界選手権に向けて生かされるだろう。

【次ページ】 サーブとスパイクレシーブの向上も見逃せない。

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