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過酷な条件のもと、
柔道の五輪代表争いが始まる。
~過密化する大会日程の中で~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShino Seki

posted2011/01/14 06:00

角刈りの16歳、山本杏。講道館杯で2009年は中学生ながら3位に入り、2010年優勝を果たした

角刈りの16歳、山本杏。講道館杯で2009年は中学生ながら3位に入り、2010年優勝を果たした

 過酷な時代になった。柔道を見ていると、そう思わずにはいられない。

 '09年に導入された世界ランキング制と、そのランキングに基づいた五輪出場権獲得のシステムにより、選手は数多くの大会への出場を余儀なくされるようになった。昨年後半だけ見ても、9月は世界選手権、11月にアジア大会か講道館杯、12月にはグランドスラム東京と、日本代表選手が出場しなければならない試合が続いた。年が明け、今月はマスターズがあるし、2月以降もグランドスラムなどの国際大会が控える。

「ひと月からふた月、大会の間隔があるなら、別に大変なことではないのでは」と思うかもしれない。しかし柔道には減量がある。選手によっては6、7kgも落とさなければならない。体への負担、精神的な消耗などを考えれば、明らかに過密日程である。

 現にグランドスラム東京では、世界選手権63kg級を連覇中の上野順恵が2回戦でまさかの敗北を喫したが、全日本女子監督の園田隆二は、「試合も多いので疲れていました」と分析していた。100kg級を制した穴井隆将も「試合が続きすぎて調子がいいのか悪いのか分からないです」と語った。

今年の成績でロンドン五輪代表争いの帰趨が決する。

 また、昨年の世界ジュニア選手権、講道館杯の52kg級で優勝し、グランドスラム東京でも準優勝と、目覚しい成長で注目を集める高校1年生の山本杏(写真)も今年、57kg級に転向する。その理由をこう説明する。

「減量、食べてまた減量。疲れました」

 彼らにかぎった話ではない。他の選手の言葉の端々からも、大会続きへの苦しさが伝わってくる。

 だが、現実は待ってくれない。ロンドン五輪のプレ・イヤーとなる今年は、五輪代表争いの勝負の1年である。実績を重視する柔道では、五輪イヤーとなってからの活躍では遅い。今年中に、五輪出場権の得られる世界ランキング男子22位、女子14位までに入った上で日本勢最上位に位置すること。今夏の世界選手権に出場し好成績を収めること。それが代表争いの帰趨を決することになる。

 各階級をリードする第一人者は、足場を固めきる1年にできるか。山本をはじめ、挑戦する立場の選手たちは、第一人者に追いつき、追い越すことができるか。過酷な現実の中、ロンドン五輪出場をかけた、待ったなしの勝負が始まる。

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