日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER

「今はトップ下で突き抜けてみたい」
二足の草鞋を脱いだ中村憲剛の覚醒。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2014/02/07 10:40

「今はトップ下で突き抜けてみたい」二足の草鞋を脱いだ中村憲剛の覚醒。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

昨季3位でACL出場権を獲得した川崎の中心にいたのは、紛れもなく中村憲剛だった。“本職”としてさらに凄みをますトップ下のプレーが、代表にもたらすものは大きいはずだ。

「自分のトップ下って、自分のなかでの評価が低かったんです――」

 川崎フロンターレでは主に「本来の」ボランチ、日本代表では主に「本来ではない」トップ下。中村憲剛にはそんな時代が長く続いた。

 チャンスメークする、組み立てる、周りを活かす。

 ジャパンブルーのユニホームを身にまとった中村は、トップ下のポジションで己に出来る役割を考えながら、己の持ち味を最大限に発揮しようとしてきた。だが、昨年6月のコンフェデレーションズカップ以降、彼は日本代表から呼ばれなくなった。

 新戦力の台頭に伴ってザックジャパンが活性化していくとともに、入れ替えの対象になった中村たち30代の控えメンバーの名前が、次第に代表から忘れ去られていく感もあった。

 しかし実は、その裏で中村は新境地を開いていた。

 コンフェデ後、フロンターレでもトップ下が「本来」の場所となり、彼のなかで何かが弾けた。ブラジルから帰国直後のベガルタ仙台戦(ナビスコカップ準々決勝セカンドレグ、6月30日)で2ゴールを挙げるなど、昨シーズンの公式戦9ゴールはすべてコンフェデ以降に奪ったものである。機を見て裏に抜け出す動きが目立つようになり、ゲームメーカーというよりアタッカーの香りを強く漂わせるようになった。

 プレーヤーとしての幅を広げている中村憲剛に、代表復帰はないのか――。

「トップ下で突き抜けてみたいっていう願望が」

 2月、気温が20度近くまで上昇した真冬の合間の春日。

 川崎フロンターレの麻生グラウンドは、選手たちの活気ある声で溢れていた。ゲーム形式の練習では、昨シーズンの勢いそのままに中村の動きの良さが目についた。ACLへの準備もあって、仕上がりも早いようだ。

 中村の表情も明るい。

 練習後にトップ下での充実ぶりを尋ねると、冒頭のコメントが返ってきた。そして彼はこう言葉を続けた。

「点を奪い始めたら、何か面白くなってきたんです。だいぶアタッカー寄りになってきましたね。それはフロンターレがチームとしてオーガナイズされ、成熟してきたからでもあるとは思う。(大久保)嘉人やレナトもいて、自分が無駄に動かなくてもボールが来るし、(ゴールを狙うための)ポジション取りができるようになってきた。

 前までは、ゲームメークもスルーパスも何でもやりたがっていたけど、今は得点できるのが一番。ゲームメークするなら下がらなきゃいけなくなるけど、それだと嘉人との距離が離れてしまう。下がったら逆にボランチを前に行かせるとか、自分のなかでその境界線というか、タイミングがつかめてきた。だから今は、トップ下で突き抜けてみたいっていう願望が僕のなかで出てきているんです」

【次ページ】 コンフェデの経験が、シュートの優先順位を上げた。

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