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ラシンが何故2年連続降格で3部へ?
とある世界的詐欺師の“アリ地獄”。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2014/01/31 10:45

ラシンが何故2年連続降格で3部へ?とある世界的詐欺師の“アリ地獄”。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2011年1月、ホームスタジアムでファンの歓声に応えるオーナー就任直後のアリ氏。このときには現在のような事態は想定する者はいなかった。

 一発勝負のトーナメント方式で行なわれていた時代と比べ、4回戦から準決勝までがホーム&アウェーの2試合で行われるようになった現行のコパデルレイ(国王杯)では、2部や3部クラブがジャイアントキリングを起こすことは難しくなった。

 それでも'09-'10シーズンに2試合合計4-1でレアル・マドリーを破ったアルコルコン(当時3部)、'11-'12シーズンにビジャレアルやエスパニョールを破って準決勝まで勝ち進んだミランデス(当時3部)など、数年に1度ながら痛快な躍進を遂げるチームが出てくるのがコパの面白いところだ。

 はたして今季も1部のセビージャ、アルメリアを立て続けに撃破し、準々決勝進出を果たした3部クラブがある。スペイン北部カンタブリア州を代表するクラブ、ラシン・サンタンデールだ。

 ラシンと言えば1部の常連クラブという印象がある人は多いのではないか。実際、2シーズン前までは10年連続で1部に所属し、'07-'08シーズンにはUEFAカップ出場権も獲得。1990年代にはイバン・デラペーニャやペドロ・ムニティス、近年ではセルヒオ・カナーレスといった才能溢れるアタッカーを輩出してきたように若手選手の育成にも定評があり、2013年には創立100周年を迎えた伝統あるクラブである。

クラブの99%の株を買い上げた“ミスター・アリ”。

 そんな地方の名門クラブがなぜ今、アマチュアカテゴリーの3部で燻っているのか。その理由を説明するには、2011年1月にクラブを買収したインド人、アーサン・アリ・サイドについて語る必要がある。

 18歳にして1800万ドルの利益を出すビジネスを成功させ、現在は世界中に散らばる130以上の会社を使って80億ポンド超を管理、運用する資産家として、また世界各国の王族や富豪に助言を与える経済アドバイザーとしても活躍する青年実業家――。

 そんな触れ込みと共にフランシスコ・ペルニア前会長に接触し、クラブの99%以上の株を買い上げた“ミスター・アリ”は、買収後すぐに返済期日が間近に迫っていた1500万ユーロの負債を肩代わりし、クラブを倒産から救ったことでファンやメディアから救世主として歓迎された。

【次ページ】 救世主は、実は世界的詐欺師だった。

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