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川上哲治が遺していった、
チームマネジメントの極意。
~V9戦士に与え続けた刺激~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKYODO

posted2013/12/13 06:00

川上哲治が遺していった、チームマネジメントの極意。~V9戦士に与え続けた刺激~<Number Web> photograph by KYODO

 巨人のV9監督だった川上哲治氏の「お別れの会」が12月2日、行なわれた。席上で話題になったのは、今オフの巨人の補強のことだった。内野手陣には成長の兆しのある寺内崇幸、故障はあったが大物の片鱗を見せた中井大介、藤村大介、脇谷亮太までいる中で、さらに故障がちの片岡治大を西武から、38歳の井端弘和を中日から獲ったのだ。

 だが、V9戦士たちは意外にもそれを冷静に受け止めていた。「川上さん時代の巨人では当たり前のこと。よそに戦力を持って行かれるのならば、飼い殺しにした方がいいという発想だったから」と言ったのは、遊撃手だった黒江透修だ。

 当時、O(王貞治)とN(長嶋茂雄)に続く5番打者は、他球団で活躍したベテラン(田中久寿夫=西鉄、高倉照幸=西鉄、森永勝也=広島、関根潤三=近鉄ら)を次々と獲得して競わせていた。V9の捕手だった森祇晶も、「やっと正捕手になったと思ったら、甲子園のスターや東京六大学の花形捕手ばかりを獲ってきて、決して安心させてくれなかった。何故そこまでして刺激するのかと聞いた時、川上さんは笑って答えてくれなかった」と話していたことがある。

「4連覇、5連覇は誰でもできる。9連覇は俺しかできない」

 ONだって決して“特別”ではなかった。川上氏は長嶋が入団した年、関西六大学のスター・難波昭二郎を獲ることを提案し、王が一人前になりかけた'60年は、東京六大学の本塁打王・木次文夫を獲得した。「組織は常に刺激しないといけない。停滞すれば澱む」と言ったあと、「人が良くてはできない仕事よ」と笑っていたのを思い出す。

 選手を競わせるだけではない。怪我をしない身体作りのため、東京五輪の十種競技の選手をコーチに招聘したり、栄養面の充実を図るため、夫人たちを招いて料理教室を催したりもした。そうしたバックアップを図る一方、緻密な野球を展開する「ドジャース戦法」を取り入れるなど、進取の気質で組織を維持した。

「ONがいたからできた9連覇」と誰かが言うと、「4連覇、5連覇は誰でもできる。9連覇は俺しかできない」と断言したのは、公私にわたってチームを完全に掌握していたという自負からだろう。

 チームの組織を保ち、選手を動かすイロハを、V9は今の時代に明確に伝えてくれているような気がする。

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