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野村克也、谷繁元信の叱咤を糧に。
忍耐の1億円プレーヤー、嶋基宏。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2013/12/11 10:30

野村克也、谷繁元信の叱咤を糧に。忍耐の1億円プレーヤー、嶋基宏。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

史上最年少の27歳で選手会長にも選ばれた嶋基宏。チームを、人を束ねる人柄は、捕手にとって最も大事なものの1つなのだ。

 日本ハム時代のダルビッシュ有や楽天の田中将大がそうだったように、極端に言ってしまえば、3年も活躍すれば年俸1億円超えを果たせる時代である。4億、5億もの大金を手にする選手だって少なくない。

 それでもやはり、「1億円プレーヤー」になることはプロ野球選手にとって今も大きな目標であり、周囲に「一流」と認められる重要な指標であることは間違いない。

 今年の契約更改交渉で、4人の1億円プレーヤーが誕生した(12月9日現在)。

 なかでも意外だったのは、楽天・嶋基宏の年俸が初めての1億円に到達したことだ。

 2011年の東日本大震災からの復興を宣言した「見せましょう、野球の底力を」の名スピーチ。'12年オフに史上最年少で日本プロ野球選手会会長に任命され、統一球やポスティングシステム問題などグラウンド外でも奔走する姿。そして、絶対的な正捕手としてチームを日本一へと導いた今季……。この数年、嶋は球界の中心にいた。

 そんな彼に楽天が提示した年俸は、前年より倍増の1億2000万円プラス出来高払い(金額は推定)。

 嶋の現在地を踏まえるのならば、7年目での大台突破は遅すぎたのかもしれない。だが、この年月にこそ、プロ野球人生における嶋の、苦悩と成長が色濃く表れている。

高校まで内野手だったが、人間性を買われて捕手の道へ。

 高校までは内野手だった。

 国学院大入学時、捕手不在のチーム事情があったにせよ、当時の竹田利秋監督はいち早く嶋の適性を見抜いていた。竹田は、コンバートの狙いをこう語っていたものだ。

「地肩が強い、フィールディングがいいなど野球としての要素もありますが、何より彼は気配りができる。技術的な要素より人間性でキャッチャーにしたんですよ」

 4年春には東都大学リーグ27季ぶりの一部昇格に貢献し、秋にはベストナイン。竹田の慧眼を、嶋は結果を出すことで証明したのだ。

 その才覚は、楽天入団後に野村克也の薫陶を受けることでさらに伸びる。

「俺は大卒のキャッチャーが嫌いなんや」

 野村からの先制パンチ。嶋は苦笑いを浮かべながら当時を話してくれたことがあった。

【次ページ】 嶋への辛辣な言葉は野村なりの期待の表れだった。

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