野球クロスロードBACK NUMBER
高卒3年目で戦力外の「清原2世」。
勧野甲輝がトライアウトで貫いたもの。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/11/29 10:32
トライアウトでアピールに成功し、ソフトバンクとの育成契約にこぎつけた歓野甲輝。長打にこだわるスタイルを貫き、一軍へ上がることはできるのか。
とことん自分に正直な男だ。
11月10日に行われた第1回12球団合同トライアウト。楽天を戦力外となった勧野甲輝は、背水の舞台でも自分の武器を躊躇なく見せることを誓っていた。
「飛ばしたい。“打って、打って”という気持ちだけでプレーできれば、と思っています」
勧野は、「飛ばしたい」とはっきり言った。
それは、単に二塁打や三塁打ではなく本塁打を指している。トライアウトに参加した選手のほとんどが、「自分のプレーをしたい」と目的意識を曖昧に答えるなか、勧野は最初から一発にこだわっていたのだ。
第1打席。ライト前に安打を放ち幸先の良いスタートを切った。しかし、第2打席の四球を経て、雨のため場所が室内練習場へと移された第3打席以降は、見逃し三振、ショートゴロ性の当たり、空振り三振と沈黙。最大のアピールポイントである長打を見せることなくトライアウトを終えた。
その表情からは悔しさがにじみ出ている。しかし、勧野に落胆の様子は全くなかった。
「僕はまだまだ上のレベル、NPBでやりたい気持ちが強い」
「1打席目にヒットを打てて気持ち的に楽になりましたけど、室内に場所が変わってからは自分のバッティングができなかったですね。でも、『絶対に打ってやろう、飛ばしてやろう』という想いをぶつけながら全打席に立てたので、その姿勢はアピールできたんじゃないかな? とは思っています」
現場記者のお約束と言ったらなんだが、囲み取材では誰からともなく「2回目のトライアウトは受けるか?」と質問が飛ぶ。多くの選手は「まずは連絡を待ちます。こなければ考えます」と答える。その言い回しがベストであることは、当然と言えば当然だろう。
だが、勧野は違った。ここでも意思をはっきりと示したのだ。
「僕はまだまだ上のレベルでやれます。今はNPBの12球団でやりたい気持ちが強いです。すぐに連絡を貰えれば嬉しいですけど、アピールする場所はここで終わったわけじゃないんで2次も受けるつもりです」