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“5000万ポンドの男”本格復活?
トーレスを蘇生させるモウリーニョ。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/11/05 10:30

“5000万ポンドの男”本格復活?トーレスを蘇生させるモウリーニョ。<Number Web> photograph by AFLO

第6節アウェイでのトッテナム戦で退場処分を受けたトーレスに囁きかけるモウリーニョ。

 10月27日のプレミアリーグ第9節、チェルシーは、フルタイム目前にフェルナンド・トーレスがネットを揺らして勝利を決めた(2-1)。

 終了間際の決勝ゴールほど、ファンを興奮させるものはない。しかも、優勝争いのライバルと目されるマンチェスター・シティを相手に、土壇場で勝ち越したのだ。スタンフォード・ブリッジが、歓喜の渦に飲み込まれたことは言うまでもない。

 しかしながらホームの観衆は、ある疑問を抱えながらスタジアムを後にしたことだろう。「トーレス復活の兆しは本物か?」という疑問だ。

 この日のトーレスは、試合が引分けに終わっていたとしても、マン・オブ・ザ・マッチに相応しかった。前半早々の7分には、ジョー・ハートの正面をついたものの、ヘディングシュートで枠を捉えた。次第にマンCのボール支配が強まっても、28分には、身を投げてクロスに合わせようとする姿があった。先制アシストは、その5分後。後方からヘディングで届いたボールを受けて、右サイドに流れながら前を向くと、カットインを仄めかす目線で相手左SBガエル・クリシの逆をつき、外から回り込んでグラウンダーのクロスを送った。

望み薄のボールを迷わず追ったトーレス。

 アンドレ・シュールレが足を出すだけで良かったゴールは、トーレスによる1点も同然だ。更に数分後には、ゴール前で再びシュールレに好機を演出し、惜しくもクロスバーを叩いた左サイドからのシュートで、自らも追加点に迫っている。後半に入っても、体を張ったキープと軽快なターンから、時には自らドリブルで、時にはチャンス到来を予期してゴール前へと走り続けた。

 そして、90分の決勝ゴール。ウィリアンからのラストパスは、祈るように放り込まれたロングボールだった。バックパスを試みたマティヤ・ナスタシッチと、飛び出したジョー・ハートの判断ミスにも助けられた。だが、見た目には望み薄と思われたボールを、トーレスが迷わずに追っていたからこそ、マルティン・デミチェリスの追走を振り切って、無人の相手ゴールにボールを蹴り込むことができた。

【次ページ】 過去には、何度もファンの期待を裏切ってきた。

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