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驚異のラップタイム。
~伸び続ける男子マラソンの記録~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byJMPA

posted2013/11/05 06:01

驚異のラップタイム。~伸び続ける男子マラソンの記録~<Number Web> photograph by JMPA

ロンドン五輪では2時間9分37秒で3位だったが、1年後の今年9月、その記録を6分以上短縮する世界記録を樹立したキプサング。

 男子マラソンで、またしても世界新記録が出た。9月29日のベルリン・マラソンで、ウィルソン・キプサング・キプロティチ(ケニア)が2時間3分23秒を記録、2年ぶりに従来の記録を15秒更新したのである。男子マラソンの世界記録更新は最近7年間で4回目。'03年以来10年間、世界記録が出ていない女子マラソンとは対照的に、次々に世界記録が出ているのである。伸び続ける男子マラソンの現状について、改めて詳しく見てみたい。

 キプサングは31歳のベテラン。トラック種目をやっていた期間が長く、初マラソンはわずか3年前、'10年4月のパリ・マラソンだった。'11年3月のびわ湖毎日マラソンに出ていて、2時間6分13秒の大会記録で優勝。同年10月のフランクフルト・マラソンで2時間3分42秒の世界歴代2位(当時)を記録している。

 '12年ロンドン五輪では銅メダル。しかし'13年は4月のロンドン・マラソンで2時間7分47秒(5位)と、それほど目立った成績ではなかった。年齢的に見ても、これ以上記録を伸ばす可能性はあまりないかと思われたが、9月のベルリン・マラソンで快走を見せた。

残り12.195kmが箱根駅伝4区の区間記録よりハイペース!

●男子マラソン・世界記録と日本記録の比較
地点 '13 ベルリン/キプサング '02 シカゴ/高岡寿成
通過タイム 区間タイム 通過タイム 区間タイム
5km 14分33秒 ―― 14分54秒 ――
10km 29分16秒 14分43秒 29分40秒 14分46秒
15km 43分45秒 14分29秒 44分22秒 14分42秒
20km 58分20秒 14分35秒 59分10秒 14分48秒
中間 1時間01分34秒 ―― 1時間02分32秒 ――
25km 1時間13分13秒 14分53秒 1時間14分03秒 14分53秒
30km 1時間28分01秒 14分48秒 1時間28分56秒 14分53秒
35km 1時間42分36秒 14分35秒 1時間43分45秒 14分49秒
40km 1時間57分12秒 14分36秒 1時間59分16秒 15分31秒
ゴール 2時間03分23秒 6分11秒 2時間06分16秒 7分00秒

 世界記録を出した時の5kmごとのラップは別表の通り。驚くべきは30km以降だ。30kmからゴールまでの12.195kmを35分22秒で走っている。1kmあたり約2分54秒だ。これがどれくらいすごいペースなのかは、箱根駅伝と比べてみるとよく分かる。箱根駅伝で最も短い区間は4区の18.5kmで、区間記録は西村知修(帝京大='11年)の54分34秒だ。これは1kmあたり約2分57秒のペース。つまりキプサングは、30kmを走ったあとで、区間記録の西村より速いペースで残りの12.195kmを走ったことになる。

 男子マラソンは最近7年間で'07年、'08年、'11年、'13年に世界記録が出ている。'07年に出た記録はハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)の2時間4分26秒だったから、その時と比べると、すでに1分03秒も速くなっている。ただ、最近7年間で出た4度の世界記録は、いずれもベルリン・マラソンで記録されたものだ。記録が狙える条件が一番そろっているのはベルリンで、狙える選手たちがそこに出場するという形になっているのだろう。

 今年の世界ランキングを見ると、キプサングのほかに2時間4分台で走っている選手が6人もいて、その中には20代前半の若い選手もいる。今回の世界記録も、さらに更新される可能性はかなり高そうだ。

【次ページ】 3分近くまで開いてしまった日本記録と世界記録の差。

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