セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER

セリエAに蔓延するEL軽視の姿勢。
名門クラブから失われていく“気概”。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

PROFILE

photograph byAFLO

posted2010/12/17 10:30

セリエAに蔓延するEL軽視の姿勢。名門クラブから失われていく“気概”。<Number Web> photograph by AFLO

4戦連続でドローに終わっていたユベントスは12月1日、レフ・ポズナニ戦でも1-1と引き分け、グループリーグ敗退が決まった

 UEFAヨーロッパリーグ(旧UEFAカップ、以下EL)でのイタリア勢の凋落ぶりが止まらない。

 今季はサンプドリア、パレルモ、ナポリ、そしてユベントスが参戦したが、グループリーグ5節終了時点でナポリ以外の3クラブがすでに敗退した。これまでの20試合で4クラブが挙げた勝ち星はわずか2つ。国別の試合平均の勝ち点では、ベラルーシやマケドニアにまで遅れを取る始末だ。

 かつて'90年代の欧州カップ戦で圧倒的優位を誇ったイタリア勢が没落した原因はどこにあるのか。

「ELは取るに足らない大会。商業的価値があるのは、真の強豪が集うチャンピオンズリーグ(CL)だけだ」

 今夏、ナポリのデ・ラウレンティス会長は、こう言って周囲を唖然とさせた。22年前にUEFAカップを制した古豪の会長が大会の存在意義に冷や水を浴びせたのである。そのうえパレルモのザンパリーニ会長も「クラブ経営の面で言えばEL出場はあまり旨味がない。CLに比べ、UEFAからの配当金はあまりに少ない」とぼやいてみせた。

莫大な利益が見込めるCLと比べて、あまりにも魅力薄なEL。

 ELになってから上積みはされているものの、出場給や放映権分配金で億単位の収入が見込めるCLとの格差はなお大きい。「欧州の辺境クラブに出向いて苦労しながら勝ち上がるより、国内リーグ戦で来季のCL出場権獲得に注力したほうがいい」と考える向きが多いのはこのためだ。

 イタリア勢のEL軽視傾向は、“得られる金額の多寡”という、至極現実的な理由によるもの。言い換えれば、短期的視野しか持たないイタリアのクラブがELに求めるものは、もはやタイトルの栄誉でも出場給でもなく、スポンサー集めの材料に使える“欧州カップ戦出場”という肩書きのみということだ。

 しかし、「CLか、国内リーグか」という極端な二択は、大きな問題をはらんでいる。

 イングランド、スペイン、ドイツの新3強に加え、UEFAの拡大路線によって門戸を開かれた東欧諸国が躍進するなか、UEFA国別ランキング3位の座をドイツに明け渡したイタリアは、'12-'13年シーズンからCL参加枠をひとつ失うことになった。このままではイタリア勢同士の“共食い”が進行するばかりである。

【次ページ】 選手やクラブの日和見主義がイタリア全体を腐らせる。

1 2 3 NEXT

海外サッカーの前後の記事

ページトップ