濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
S-cupで本職を圧倒したブアカーオ!
ムエタイとK-1を融合した強さの秘密。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/12/08 10:30
総合格闘技を土壌とするトビー・イマダとの決勝戦。ブアカーオ(右)は得意のヒザにローキックを織り交ぜ、S-cup初出場にして危なげなく初優勝を飾った
11月23日、JCBホールで開催された『S-cup』は、打撃に加えて投げ、スタンディングでの絞め及び関節技も認められる“立ち技総合格闘技”シュートボクシングの世界トーナメントである。
シュートボクシングは打撃だけでも組み技だけでも勝てず、といって寝技に持ち込むこともできない、専門性の高い競技だ。だが、今回の『S-cup』で優勝したのは“本職”のシュートボクサーではなかった。初出場のブアカーオ・ポー・プラムック、つまりムエタイの選手が“なんでもありの立ち技最強”の座に就いたのである。
ブアカーオの闘いぶりに、ほとんど付け入る隙はなかった。
一回戦は宍戸大樹をハイキックでダウンさせて判定勝ち。
準決勝のヘンリー・ヴァン・オプスタル戦でも終始、試合を支配してみせた。
決勝はMMAファイターであるトビー・イマダとの対戦だった。準決勝でディフェンディング・チャンピオンのアンディ・サワーを一本背負いで投げ、ビッグ・アップセットを成し遂げたイマダだったが、打撃のダメージは大きく満身創痍の状態。そこへブアカーオは容赦なくローキックの連打を叩き込んだ。1ラウンドに2度、2ラウンドに3度ダウンを奪ってのKO勝利である。
がむしゃらなムエタイスタイルが活きたリング。
過去にK-1 MAXで2度の優勝経験を持ち、日本にもファンの多いブアカーオだが、この日の闘いぶりはこれまでとは違って見えた。
一言でいうと荒々しいのだ。
身体ごとぶつかっていくようなボディブロー、そして組みついてのヒザ蹴り連打。“華麗なテクニック”以上に、相手の気力も体力も根こそぎ削り取るような力強さで彼は勝ち上がっていった。
「シュートボクシングは初めてでしたが、K-1よりも闘いやすかったですね」とブアカーオは試合を振り返っている。両手で掴んでの攻撃が禁止(昨年までは一発のみ有効)のK-1とは違い、シュートボクシングでは膠着しない限り攻撃が無制限だ。そのことで、彼本来の“組み力”が活きた。