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ブランコが見据える二冠王への道。
移籍で目覚めたチームバッティング。
 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/10/02 11:25

ブランコが見据える二冠王への道。 移籍で目覚めたチームバッティング。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

本塁打は19本差と届きそうにないが、バレンティンとの打率差はわずか.002。打点は6点差でリードし、2人で三冠を占めることは確実な状況。最後のつばぜり合いを制するのはどっちだ。

 殺伐とした雰囲気はない。むしろ、互いに健闘を誓い合うような、そんなタイトル争い。

 目下、打点王。打率も含め二冠王も射程圏内のDeNA・ブランコ(32)は、三冠王を目指すヤクルト・バレンティン(29)との関係性をこのように語る。

「自分がピッチャーであればライバル視するんだろうけど、お互いバッターだからね。そういう意識を持ったことはないよ。彼とはアミーゴ(友達)なんだ。お互いに『いい仕事をして、素晴らしい成績を残そう』と、いつもそんな話ばかりしているよ」

 圧倒的なパフォーマンスで神宮球場を支配した9月30日のヤクルト戦。ふたりは、確かにエールの交換をしていた。

 3回、バレンティンが自身の日本記録を更新する59号をレフトスタンド上段に叩き込む。すると5回には、ブランコがレフトスタンド中段に3ランを放ち、1点差だった打点を4点差へと広げる。

目標に掲げてきた40本塁打に到達し「アーハー!」。

 その直後の攻守交替で、こんなやり取りがあったという。

「ホームラン打ててよかったな」

 バレンティンからすれば余裕の祝福だったかもしれないが、ブランコはまるで他人事のようにこう返事する。

「お前はあと6試合も残っているから、打点王もいけるんじゃないか?」

 その言葉は、あるいは相手への敬意を込めてのものだったのか。いずれにせよ、7回に2打席連続となる2ランを放つと、そのテンションに微妙な変化が生じてくるのだ。

 自己最多の記録を更新する40本塁打。毎年、この数字を目標に掲げてきたブランコにとって、「40本」が意味するものは大きい。それは試合後のラテン系のノリを見れば一目瞭然だった。

 アーハー!

 球団広報いわく、気分が最高潮に乗っている際に出す相槌。記者たちの質問に「アーハー!」と呼応しながら、ブランコは自身の記録達成の喜びを語る。

「記録を更新できたことはとても嬉しいし、興奮しているよ。第1打席はボールが見えていなかったけど、第2打席以降は見えるようになったから自分のスイングができたんだ」

【次ページ】 バレンティンと19本塁打差でも、窺える充足感。

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