SCORE CARDBACK NUMBER

肉体改造のパッキアオ、
6階級制覇の驚異的成長。
~50.8kgから69.85kgへ~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2010/12/05 08:00

肉体改造のパッキアオ、6階級制覇の驚異的成長。~50.8kgから69.85kgへ~<Number Web> photograph by Getty Images

 ボクサー=減量というステレオタイプの連想はもう古いと痛感するのは、マニー・パッキアオの「増量の驚異」を目の当たりにするときである。

 去る11月13日、パッキアオは米テキサス州アーリントンの4万超の大観客の前で、メキシコのタフガイ、アントニオ・マルガリート相手に自身が認めた「最もきつい試合」を戦い、12回大差判定勝ちでWBC世界スーパーウェルター級王座に就いた。これで6階級目の世界獲得となり、デラホーヤの持つ最多記録に並んだというのが日本メディアの解釈だが、パッキアオの地元フィリピンや米国ではマイナー団体の認定も含め「8階級」と報じた。どちらが正しいか議論する余裕はないが、いずれにしてもパッキアオの偉大さは変わらない。

 マルガリート戦では、ひと回りも大きな相手に対し、軽い脚さばきで縦横無尽にステップを切り、攻めては上下にパンチを打ち分け、危険なメキシカンに決定打を許さなかった。強打が売りのパッキアオも、この日はスピードと技術でメキシコのトルネードを翻弄した。必要に応じて戦法を切り替えられる戦略家であることも、パッキアオの強みである。

階級別ベルトコレクションもそろそろ終幕か?

 それにしても、国会議員にして1試合10億円以上を稼ぐスーパースターは他にいない。何がすごいといって、11年前まで50.8kgのフライ級で世界の頂点にあった男が、現在69.85kgが上限の階級の世界王座に君臨していることである。これ以上のすごさがあろうか。いくら特別メニューの科学的トレーニングを重ね、プロテインを飲んで肉体改造をしても、軽量級の選手が重量級の世界で通用するとは、常識的には理解できない。終盤でもパワーダウンしないスタミナを維持できるのも驚異的だ。対戦を熱望されているフロイド・メイウェザーが「五輪方式のドーピング検査」を試合実現の条件に挙げたのも理解できなくはない。これで一度は話が決裂したのだが……。

 パッキアオと名参謀フレディ・ローチは、いたずらに「増量ゲーム」にのめり込んでいるのでもなさそうだ。今回も実際はリミットを約4kg下回る65kg台で計量をパス。これがもし72.57kg以下のミドル級となると、二流王者が相手でない限り無謀だろう。階級別ベルトコレクションもそろそろ終幕のようにも思える。

■関連コラム► 違和感があった長谷川穂積の世界戦。フェザー転向で生じた誤算の中身。
► スピードとスマイル。~6階級制覇、パッキャオの驚異~

関連キーワード
マニー・パッキャオ

ページトップ