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<HONDA Method> ソルティーロが本田圭佑を超える日 連載第8回 「本田が示したスクールの方向性」 

text by

榎森亮太

榎森亮太Ryota Emori

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photograph byHONDA ESTILO

posted2013/10/01 06:01

年間40校――託された大きな課題をクリアするために、何をすべきか。
本田を囲んだミーティングで提示された新モデルとは。
彼が描く理想のサッカー像に肉薄する。

 8月上旬、日本代表のウルグアイ戦の約1週間前に帰国した本田圭佑は、自主トレ合宿の最終日にソルティーロのスタッフ総勢10名を集めました。

 30度を超える炎天下での90分は辛かったですが、スタッフ全員が本田のイメージに直接触れることができたことは、貴重な財産となったはずです。トレーニング後に、会議室で「スクールの方向性」を議論し「我々のサッカー観とは」という話題になった時、本田はこう宣言した。「将来的にはポゼッションをベースとしたサッカーを理解している子供達を育成してほしい」

 少し意外でした。何故? 今更? 疑問が湧きましたが、さすがに誰も反論する気配はありません。そこで僕が先陣を切ることにしました。

「確かにポゼッションは大事かもしれない。でも、ロッベンならドリブル、中村俊輔選手ならスルーパス、細貝選手ならボール奪取、ベッカムなら右足のクロスみたいに、得意な武器に特化して伸ばしてあげた方が、子供達にとって将来プラスになるんじゃないだろうか」

小学生の頃は身体能力で何とかなるんよ。でも……。

榎森亮太 Ryota Emori
1985年生まれ。奥寺スポーツアカデミーに在学中、上海申花U-19に留学。卒業後、長野エルザ(現・長野パルセイロ)に加入。ドイツに渡り下部リーグでプレーしていた時に本田圭佑と出会う。その後、専属マネージャーを経て「ソルティーロ」事業責任者に就任。

 本田は少し間を置いて、「いや、違う」と断言しました。ポゼッション王国オランダでプレーした経験やバルサのカンテラに所属する久保建英(たけふさ)君を観て感じたこと、自身のアイデアもミックスした上で「世界のトップレベルでは10歳前後でサッカーとは何ぞや、ということを身をもって理解している。小学生の頃は身体能力で何とかなるんよ。トラップミスが足の速い子にとってはチャンスボールになってしまう。でも、レベルが上がるほど、そういう子は苦労する。逆にこの時期にサッカーのベースを身につけていたからこそ、エモがいま挙げた選手も足の速さや体の強さに関わらず、自分の色を生かしながらプレーし続けられるんだと思う」と説いた。

 なるほど……という空気がスタッフの間に流れました。現在のソルティーロはサッカーの入り口に立つ子供達にサッカーの魅力を伝えていくことを理念の一つに掲げていますが、次のステップではもう一つ上のステージの育成を目指したい。

<次ページへ続く>

【次ページ】 年間40校創設は全国展開への第一段階でしかない。

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