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<『キャプテン翼』作者が語る> 高橋陽一 「カール・ハインツ・シュナイダー誕生秘話」 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

PROFILE

photograph byYoichi Takahashi

posted2013/09/18 06:01

<『キャプテン翼』作者が語る> 高橋陽一 「カール・ハインツ・シュナイダー誕生秘話」<Number Web> photograph by Yoichi Takahashi

日本との環境差に「現実の壁」を感じたが……。

 かたや日本ではまだプロのリーグもなく、サッカー選手を目指す子供たちは、学校の部活動を通して這い上がっていかなければならない時代です。自分たちがまだW杯に出場できないのは、無理もないかもしれないと思ったりしました。シュナイダーはこういう日本サッカーとブンデスリーガの距離感、世界でまだ実績を残していない日本が、チャンピオンズカップやW杯の常連国に挑んでいかなければならないという「現実の壁」の高さを象徴する存在になっていたとも思います。

 ただしブンデスリーガの取材では、もうひとつ感銘を受けた要素もありました。厳しいハンディを乗り越え、日本人のサッカー選手が頑張っている姿です。奥寺さんや尾崎さんは何もないところから体一つでドイツに渡り、第一線で活躍していたわけですから。

 後には風間八宏さんもブンデスリーガでプレーしますが、日本人選手が海外で本格的にプレーするようになった最初の国がドイツだったというのは、意外な「相性の良さ」も関係しているような気がします。

クラマーさん、大和魂とゲルマン魂……日本とドイツを繋ぐ縁。

 日本とドイツのサッカーはクラマーさん以来の縁で繋がっていて、どちらも組織的なプレーやチームワークを重んじる。ゲルマン魂と大和魂はよく比較されましたしね。勤勉さや真面目さを重んじる国民性も、似ていると言われます。またリーガ・エスパニョーラやセリエの場合は、ともすれば日本人が色眼鏡で見られてしまうきらいが残っていますが、ブンデスリーガは、選手の実力をきちんと評価してくれる傾向が強い。

 私がシュナイダーを描いた頃から、時代はずいぶん変わりました。正直な話、日本人選手がこれほど多くドイツでプレーする日が来るとは予想していなかったし、ブンデスリーガ自体も様々な浮き沈みを経験しています。

 でも、日本人サッカー選手とブンデスリーガの近しさは、あまり変わっていないのかもしれません。翼をバルセロナに加入させた私としては、スペインでも日本人選手が活躍してくれることを願っていますが(笑)。

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高橋陽一

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