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「新たな故郷」で心機一転。
佐伯貴弘、40歳の挑戦。
~横浜一筋の男と中日・落合監督~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKYODO

posted2010/11/29 06:00

「新たな故郷」で心機一転。佐伯貴弘、40歳の挑戦。~横浜一筋の男と中日・落合監督~<Number Web> photograph by KYODO

11月15日に行なわれた記者会見で「新しい挑戦をさせてもらえる」と入団の喜びを語った

 横浜一筋18年。今年で40歳を迎えた佐伯貴弘が、フロント入りの誘いもなく戦力外通告を受けた。これで1998年に38年ぶりの日本一を果たした時の野手は、誰もいなくなってしまった。

 当時のマシンガン打線の小気味よさを次世代に伝えようとした鈴木尚典二軍コーチも、筒香嘉智が一人前になるのを見ずに今年で退任している。たしかに当時の連中は、ひとクセもふたクセもあるかもしれない。しかし皆、横浜への愛着を人一倍感じさせてくれた。いつもライトスタンドの応援団とケンカして、ヤジに反発しながらプレーしていた佐伯を今でも思い出す。

 今シーズン、ある球団関係者が「佐伯みたいな男をベンチに置いたほうがいい」と現場の尾花高夫監督に何度も進言したらしいが、聞き入れてもらえなかったと言う。小さくまとまった「小利口」な選手ばかりが多くなっている横浜に、佐伯のような存在は、絶対に必要だったはず。佐伯を活かせない首脳陣は何を考えているのか、と思いたくなったものだ。

立浪和義に代わる代打の一番手として、期待は高まっている。

 自由契約になった佐伯に救いの手を差し伸べたのが中日・落合博満監督だった。

「チャンスに打てる左打者」が日本一を逃したチームに必要だと判断。今オフ、補強の第一弾として佐伯を選んだのである。昨年まで活躍していた立浪和義に代わる代打の一番手として、期待は高まっている。

 佐伯自身も今季は10試合しか出番がなく、二軍に燻っていた。チャンスさえあれば……という思いが強く、秋季練習から中日のユニフォームを着て参加し、来季の出直しを誓っている。

 落合監督は、とことん干されても野球がやりたくて仕方が無い選手への誘いかけが得意。佐伯にも再生のチャンスをしっかりと与えている。

「彼らは命を賭けて野球をやっているし、若手の甘ちゃんへの刺激にもなる」と語り、中村紀洋や河原純一も落合監督の下で蘇ってきた。佐伯にも自分を捨てた横浜への意地がある。叩かれれば叩かれるほど燃えるタイプなだけに、横浜にしてみればやっかいな選手になってきそうだ。

「やるからにはレギュラーを獲るつもり。故郷を失った自分は、新しい場所を故郷にする」と意気込んでの新天地。四十男は、単身赴任で野球生命を賭けて戦う。

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