野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
“MLB最強のクレイジー”、
「T」が横浜を覚醒させる夏。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by(C)YDB
posted2013/07/17 10:30
ブルワーズで青木宣親にポジションを奪われ、昨年オフにFAで移籍したナイジャー・モーガン。青木は「トラブルメーカーのイメージがあると思うんですけど、そんなこと全然なくて、とてもあったかい人間で、すごく好きなタイプの選手」と雑誌に答えている。
今日も猛暑が続く日本列島。
炎天下の町をTシャツを汗だくにしてさまよえば、海開きしたビーチでTバック水着のお姉さんが闊歩する姿を妄想する今日この頃。涼を求めて冷房の効いたコンビニに逃げ込めば「Tポイントカードはお持ちですか?」と毎度毎度問い詰められる「T」にまみれた熱い夏。
そんな中、今最も「T」が熱いのが、横浜である。
横浜DeNAベイスターズ、ナイジャー・モーガン。またの名をTony Plush。頭文字「T」。
MLB時代から「プロ野球はエンターテイメントだ」とし、お客さんを楽しませることを是としてプロ野球選手としての別人格「トニー・プラッシュ」を名乗り(他にも『トニー・ガンボ』など複数の別人格を名乗っていた)、俊足巧打にアグレッシブなプレーをはじめ、パフォーマンスから乱闘まですべて全力で挑み、MLBファンを唸らせたエンターテイナーにして「MLB最強のクレイジー」。
しかし序盤戦、肝心の成績はサッパリ……。
そんな前評判と共に今シーズン来日したモーガンは、MLB時代から続けている頭文字の「T」を両手で作るパフォーマンスを、ヒットを打った後、盗塁を決めた後、ファインプレーをした後、単にボールを捕った後に、挨拶代わりに、サインに応じる時、町ですれ違いざまに……と、四六時中連発してきた。それは瞬く間にベイスターズファンの間に定着し、ハマスタは「T」に染まっていった。
しかし、肝心の成績の方はサッパリだった。開幕から1カ月で打率.132、守備でも凡ミスを度々やらかし、4月20日には再調整を命じられてファーム行き。5月1日に復帰すると、月間打率.262とやや復調の兆しを見せたものの、当初期待されていた成績からすれば圧倒的に物足りず。キャラクターが面白く、ベンチ・スタンドを盛り上げてはくれるが、ダメ外人、ネタ外人、二軍焼けした左打席の森本稀哲……等々の散々な評価だった。
そんな中でも、モーガンは開幕直後からこんなことをキッパリと言い続けていた。
「俺が調子を上げるのは6月からだ」