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スポーツの見方が変わる?
「ニコ生」という新潮流。
~W杯最終予選×ネット中継の相性~ 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byNICONICO

posted2013/07/07 08:00

スポーツの見方が変わる?「ニコ生」という新潮流。~W杯最終予選×ネット中継の相性~<Number Web> photograph by NICONICO

6月4日オーストラリア戦の中継番組。盛り上がる場面では、画面がコメントで埋め尽くされることも。

 サッカー日本代表がW杯出場を決めた6月4日の夜、お台場のとある会場では1000人を超えるサポーターが一喜一憂を繰り返していた。

 600インチの特大モニター、そのど真ん中に本田圭佑のPKが突き刺さったのは、会場に“憂”の空気が充満しかけたその時だった。待ちに待った一番の歓喜の瞬間に、1000人のサポーターが沸く――とここまでは、よくあるパブリック・ビューイングの光景である。

 ステージの隅に設けられた小さな雛壇では、インターネット動画サービス『ニコニコ生放送』の中継が行なわれていた。出演者は19インチの小型モニターを見ながら高くも低くもないテンションでサッカーを語り、時折、目の前のサポーターではなく“ネット”の向こう側に話し掛ける。この日の視聴者は約13万人。決戦の舞台となった埼スタが誇るキャパシティーの2倍である。

 世の中の仕組みを変えたインターネットは、どうやらスポーツの観戦スタイルも変えてしまったらしい。仕掛け人となったのは、動画配信サービスでネット社会の最先端を走る(株)ドワンゴである。

“実況板”を楽しむ人にとってニコ生の愛称はすごくいいと感じた。

 生放送番組を配信する通称『ニコ生』がサッカー日本代表戦の実況生中継を配信し始めたのは、'10年のことだった。とはいえその画面には、ピッチもボールも選手も映らない。視界に飛び込んでくるのはズラリと並んだ実況者と解説者、それからゲストだけである。果たしていったい、何が楽しいのか……実はその理由に、同サービスの人気の秘密がある。

 番組プロデューサーの大野学氏、現場責任者の船渡健志氏はこう説明する。

「『2ちゃんねる』にはかなり前から“実況民”と呼ばれる人たちがいて、彼らが試合の流れをリアルタイムで書き込む“実況板”が人気でした。僕らは、それを楽しむ人と、リアルタイムでコメントを書き込めるニコ生の相性がすごくいいと感じました。テレビで観戦しながら、何かを言いたい人たちが自由に発言できる場所、それをサービスとして提供できるんじゃないかと」

 狙いは当たった。ファンはテレビで日本代表戦の生中継を観る。その横にはニコ生を映すパソコンを置き、実況者や解説者のコメントを耳に入れつつ、自分の意見や感想を好き放題に書き込む。書き込んだコメントは目の前の画面にサーっと流れ、それを見た出演者がリアルタイムで反応する。“画面の中の人”とのそんなやり取りが妙に心地良い。

【次ページ】 実況者、解説者の見せる“ユルさ”が共感を呼ぶ。

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