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貪欲なブラジルが静かに優勝。
お土産はダビド・ルイスの肘打ち。 

text by

近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byAtsushi Kondo

posted2013/07/03 13:50

貪欲なブラジルが静かに優勝。お土産はダビド・ルイスの肘打ち。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

コパカバーナにいた“ボールピープル”のひとり。カナリアイエローがビーチに映える。

カメラ片手に世界中を巡るフォトジャーナリストの近藤篤氏。
今回は氏の最新刊となる『ボールピープル』の発売を記念して、
コンフェデレーションズ杯の紀行エッセイを発表することとなりました。

世界王者スペインに、若きセレソンはどう挑むのか……。
コンフェデ杯決勝の地は聖地・マラカナンスタジアム。
かつて南米に住んでいた近藤氏が思い出を語ります。
短期連載『ボールピープル ブラジル編』、最終回です!

 準決勝第2戦、イタリア対スペインの試合はリオデジャネイロへの移動中に見た。

 ベロオリゾンチ空港の搭乗待合室に1台だけ、試合の模様を流していた大型テレビがあり、かなりの数の乗客が画面に見入っていた。僕が予約していたフライトは、定刻通りならこの試合の前半が終わる頃には離陸しているはずだった。しかしなんの説明もなく出発は遅れに遅れていた。もしかすると、機長はまだ試合を見ているのだろうか?

 飛行機がようやくタラップを離れたとき、スペインが勝った! と前方座席に座っていた誰かが叫んだ。

 

 隣のブラジル人に、決勝は難しい試合になりそうですね、と話しかけると、彼はこう答えた。まぁでもスペインが相手だと自分たちのサッカーをやらしてもらえるからね。

 確かにブラジルは準決勝で、ウルグアイに自分たちのサッカーをやらせてもらえず、かなり苦戦した。

 でもたとえ自分たちのサッカーをやらせてもらえても、ブラジルはスペインに勝てないですよ。

 僕は内心そう思っていた。

せめて15万人くらい入らないと……マラカナンと呼べないのでは。

 コパカバーナからメディアバスに乗り、コンフェデレーションズカップ決勝の会場に、キックオフの4時間前に着いた。

 Estadio do Maracana。

 聖地、マラカナンスタジアム。

 かつて僕はこのスタジアムに何度も足を運んでいた。ブラジル代表の試合、フラメンゴ対フルミネンセ、フラメンゴ対サンパウロ……。

 ピッチの両ゴール裏には公衆電話が立っていて、たまにゴールを決めた選手がその電話のところまで走ってゆき、受話器を耳に当てて誰かに電話をかけるパフォーマンスをした。この公衆電話は本当に回線が通じていて、僕も実際に国際電話のコレクトコールで日本にいたGFと話したことがある。

 ピッチの周りには観客が侵入できないよう堀が巡らされ、その向こうには巨大なコンクリートのスタンドが上空にのびていた。僕自身は15万人入ったマラカナンしか見たことがないが、1950年建設当時の収容人員は20万人だったという。嘘みたいに巨大なスタジアムだったが、やがて老朽化が進み、2014年のW杯開催をきっかけに取り壊しが決まった。

 新しいマラカナン。僕は今回コンフェデに来るまで、ブラジルサッカーの聖地と呼ぶべきこのスタジアムは、てっきり以前の収容人数を維持しつつ、新たに建て直されたものだと勝手に信じ込んでいた。今大会でがっかりしたことが2つあるとすれば、ひとつはメキシコ戦の日本の戦いぶり、もうひとつはこの“たった8万人”ほどしか入れない新しいマラカナンかもしれない。

 せめて15万人くらい入らなきゃ、マラカナンとは呼べないじゃないか。

【次ページ】 かつてのスタジアム周辺は歩くのも危険な場所で……。

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