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世界水準の投てき。
~やり投・村上幸史は“メダル級”~ 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2013/06/05 06:00

世界水準の投てき。~やり投・村上幸史は“メダル級”~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

4月29日の織田記念陸上で、日本歴代2位となる85メートル96をマークした村上。世界陸上モスクワに向け、まずは6月7日に開幕する日本選手権に臨む。

 今年の陸上競技・春季サーキットで、最大の話題は男子100m、17歳の桐生祥秀(洛南高校3年)が日本歴代2位に当たる10秒01を出したことだった。昨年、10秒19のユース年代(17歳以下)歴代世界最高記録を出して注目されていたが、今年初戦の4月29 日、織田記念陸上でいきなり10秒01とは、本人を含めて誰にも予測できない大飛躍だった。

 5月5日のゴールデングランプリでは、向かい風1.2mで10秒40に終わったものの、初めて9秒台の自己記録を持つ外国人選手3人と走って、そのうち1人には先着して3位に入った。この結果からも、すでに日本の第一人者であることを証明した形だ。伊東浩司の日本記録10秒00('98年)の突破に向けて、期待が高まるのは当然の状況になっている。

 男子200mでも飯塚翔太(中大4年)が静岡国際陸上で20秒21の日本歴代3位、今季世界ランキング5位(5月31日時点)の記録を出すなど、短距離種目が活況を呈して、注目されている。

ロンドン五輪金メダリストを上回る好記録を4月の大会でマーク。

 しかし、世界的な記録レベルという視点だけで見てみると、春季サーキット全試合の中で最もレベルの高かった記録は、男子やり投で村上幸史(スズキ浜松AC)が4月29日の織田記念陸上で記録した85m96だ。今季世界ランキングで3位につけているだけでなく、昨年のロンドン五輪に当てはめると、金メダルのケショーン・ウォルコット(トリニダードトバゴ)の記録84m58を上回っているのである。

 一昨年のテグ世界選手権に当てはめてみても、銀メダルに相当する記録だ(別表参照)。今季の世界ランキングだけでなく、最近の世界大会に当てはめて、いずれもメダル当確に相当する記録は、今年の日本陸上界では村上の85m96だけだ。

●やり投・村上幸史の今季最高85m96のランキング
  記録 選手
世界ランク
'13年
(1) 87m60 T・ピトカマキ フィンランド
(2) 86m67 V・ヴェセリー チェコ
(3) 85m96 村上幸史 日本
(4) 85m63 D・タラビン ロシア
(5) 85m59 G・マルチネス キューバ
ロンドン五輪
'12年
85m96 村上幸史 日本
金 84m58 K・ウォルコット トリニダードトバゴ
銀 84m51 O・ピャトニツィア ウクライナ
銅 84m12 A・ルースカネン フィンランド
(4) 83m34 V・ヴェセリー チェコ
(5) 82m80 T・ピトカマキ フィンランド
テグ世界陸上
'11年
金 86m27 M・デツォルド ドイツ
85m96 村上幸史 日本
銀 84m78 A・トルキルドセン ノルウェー
銅 84m30 G・マルチネス キューバ
(4) 84m11 V・ヴェセリー チェコ
(5) 83m34 F・アバン トルコ
※'13年世界ランキングは5月31日時点。

 この記録は日本歴代2位。村上にとっては自己ベストを一気に約2m更新するものだった。短距離種目や跳躍種目と同様に、やり投の場合も、記録はある程度は風の状態に左右される。このため、異なる大会の記録を単純には比較できないものの、織田記念陸上で見せた村上の投てきが、今年8月の世界選手権でもメダル当確のレベルにあることは間違いないだろう。

 村上はすでに'09年のベルリン世界選手権で銅メダルを獲得している。この時は82m97(予選で83m10)だった。その後、テグ世界選手権では80m19、予選15位で決勝(12位まで)に進出できなかった。ロンドン五輪は77m80で、やはり予選を突破できなかった。

【次ページ】 予選突破に向けて重要な“最初の3投”も充実の内容。

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