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最優秀コーチを生んだ、
今季ナゲッツの一体感。
~癌を患った名将が達した新境地~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2013/06/03 06:00

最優秀コーチを生んだ、今季ナゲッツの一体感。~癌を患った名将が達した新境地~<Number Web> photograph by Getty Images

名将カールHCは1984年のキャブスを皮切りに5チームを率い、2010年には通算1000勝を記録。

 ジョージ・カール(デンバー・ナゲッツ・ヘッドコーチ)はかつて、ボストンの街中に置かれた名将レッド・アウアバックの銅像のベンチに腰かけてみたことがあるという。いつかコーチとして認められ、アウアバックの名前がつけられたNBA最優秀コーチ賞を受賞し、銅像と同じ形のトロフィーを受け取りたいと野心に燃えていた頃のことだ。

 それから何年たっても同賞とは縁がなかった。何度もディビジョン優勝し、ほぼ毎季、チームをプレイオフに導いたが、それでもトロフィーを手にすることはできなかった。そのうちカールも受賞にこだわらなくなっていった。

 そんなカールが今季、NBAヘッドコーチ25年目にして初めて最優秀コーチに選ばれた。スーパースターがいないナゲッツを率いて、競争の激しいウェスタン・カンファレンス3位、57勝25敗の成績をあげたことが認められたのだ。

 もっとも、タイミングのいい受賞ではなかった。ナゲッツがプレイオフ1回戦で下位シードのウォリアーズに敗れ、早々に敗退した直後だったのだ。スターターのダニロ・ガリナリがシーズン終盤に故障した影響が大きかったとはいえ、カールの采配を批判する声も出ていた。

癌再発を避けるための「民主主義」がナゲッツを成長させた。

 カール自身、まだ敗戦の悔しさを消化しきれずにいた。しかしその一方で、受賞の知らせを受け、今季のチームこそ受賞するのにふさわしいチームなのだという誇らしい気持ちもあった。

「これまでコーチをしてきて、ここまでチーム、コーチ陣、組織、サポート・スタッフが一丸となったことはなかった」とカールは言う。「私の名前での賞だけれど、みんなでこの一体感を作り出したからこそ、受賞できたのだと思う」

 '05年に前立腺癌、'10年に咽頭癌を患ったカールは、それ以来、意識して周りのスタッフの力を借りるようになった。

「前よりも民主主義になった」とカール。癌再発を避けるためにも、ストレスを減らす必要があった。その新しいスタイルが、選手からスタッフまで、全員が力を合わせて戦うチームを作り出した。

「一人がうまくやれるかどうかではなく、みんなで一丸となることで、どれだけうまくやれるかなんだ」とカール。

 トロフィーは、新境地に達したからこそ手にできた最高の勲章だった。

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