SCORE CARDBACK NUMBER

日本のリングで続く、
アップセットの魅力。
~新鋭ボクサーを食う“咬ませ”~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2013/03/30 08:00

デビュー以来の連続KO「12」が歴代3位タイの土屋(左)は、接近戦で川瀬の連打を浴びた。

デビュー以来の連続KO「12」が歴代3位タイの土屋(左)は、接近戦で川瀬の連打を浴びた。

 プロボクシングはある面「予定調和」のスポーツで、事前の予想通りの結果となることが多い。だが、時に“咬ませ”のつもりで呼んだ相手に、ホープが逆に食われるという結果になることもある。もちろんこれもボクシングの醍醐味のひとつで、それがなければ試合を見る者などいなくなってしまうだろう。

 前置きが長くなったが、最近日本のリングは番狂わせが続いている。

 2月25日、後楽園ホール。キックから転向して14連勝12KOをマークしていた注目の新鋭・土屋修平の試合は、名古屋から呼んだ古参・川瀬昭二を初回にダウンさせKOは時間の問題という、まさに予想通りの展開。しかし強引に倒しに行って仕留め切れず、逆に手負いの川瀬の的確な左リードからの反撃打を浴びダメージを蓄積。終盤9回にメッタ打ちされまさかのTKO負けとなった。

 3月10日は神戸のリング。プロ7戦目で東洋太平洋S・バンタム級王座についた関西の新星・小國以載が、東京から招いた挑戦者・和氣慎吾に10回TKO負けを喫し王座から転落した。この日リングに上がるまで10戦全勝の小國に対し、和氣は12勝4敗2分と平凡な戦績。だが、試合では終始小國が劣勢で、サプライズの度合いでは土屋の敗戦より大きかった。初黒星のショックに、次代の世界王者の期待もかかっていた小國は「引退」を口にしたが、果たして本気だろうか。

挫折から這い上がり世界王者になった大橋秀行のようになれるか?

 このようなありえない結果も、よくよく振り返ってみれば原因が浮かぶ。呼んだ相手を過小評価していたり、逆に売り出し中の選手を過大評価していたり。「いっちょう食ってやるか」という“咬ませ”の意地も計算に入れねばなるまい。

 過去のビッグ・アップセットといえば、思い出されるのは'86年の後楽園ホール。当時「150年に1人の天才」として売り出し中の大橋秀行が、プロ転向5戦目に無名のコリアン・ファイター金奉準の接近戦に巻き込まれ、よもやの判定負けに泣いた。大橋の強打に耐えたタフネス。プロの水に慣れない時期には選んではいけない相手がいるとすれば、まさにこの時の金だった。3年後、金は世界王者に出世し、挫折を味わった大橋も、その後2度世界のベルトを手に入れている。

 今回アップセットの犠牲となった小國と土屋の今後にも注目していきたい。

関連コラム

ページトップ