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なでしこ、アルガルベ杯5位で終幕。
中国戦で見えた「ボランチ」という課題。 

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河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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posted2013/03/14 12:25

なでしこ、アルガルベ杯5位で終幕。中国戦で見えた「ボランチ」という課題。<Number Web> photograph by Getty Images

アルガルベカップの最終戦に臨んだ、なでしこの先発メンバー。後列左から、宇津木瑠美、長船加奈、大滝麻未、熊谷紗希(キャプテン)、山根恵里奈、大儀見優季。前列左から、中島依美、加戸由佳、川村真理、山崎円美、有吉佐織。

 今大会のなでしこは、中堅・若手選手の底上げをテーマに試行錯誤を続けている。

 ポルトガルで行われていた、女子サッカーのアルガルベ杯。大会最終日に行われた5位/6位決定戦の相手となった中国は、どうやら日本以上にチーム構築に苦労している様子だった。

 かつてはアジアのみならず世界屈指の強国だった中国は、2011年女子W杯、'12年ロンドン五輪の出場を逃した。そこでU-20世代から有望株を引き上げるなど、先を見据えた大胆な世代交代を図っている最中なのだが、驚くべきことにそんな若いチームへ、代表引退していた32歳のピュウ・ウェイを呼び戻したのだ。

 彼女は、1999年に中国が女子W杯で準優勝した時のメンバーの1人。'02年にはアメリカでプレーし、若き日のアビー・ワンバックとチームメイトだった。

 日本との戦いの中でピュウ・ウェイが一番強烈な印象を残したのは、北京五輪を目前に控えた'08年女子アジア杯ベトナム大会の準決勝だろう。

かつて、なでしこを翻弄した中国代表選手が、5年ぶりに復帰?

 当時の日本は佐々木則夫監督の就任からまだ日が浅く、彼がチームに導入したゾーンディフェンスはまだ未完成状態。それを見抜いた右MFのピュウ・ウェイは、なでしこのDF、MFのどちらもがプレスをかけにくい巧妙なポジション取りをして攻撃の起点となった。1-3で中国に敗れたこの試合は日本にとって貴重なレッスンとなり、同カードの再現となった2カ月後の北京五輪準々決勝では徹底したマークの受け渡しで彼女を完封、勝利への伏線となったのである。

 この試合をもってナショナルチームを去ったピュウ・ウェイを約5年ぶりに復帰させ、主将、そして攻守の要であるボランチを任せているところに、今の中国の苦しい台所事情がうかがえる。

 中国の若手選手たちは、それなりに技術やスピードを持っているが、誰もが判で押したように前へ急ぐばかり。試合の流れを読んで、それをコントロールできるタイプがいないのだ。だからピュウ・ウェイには、チームのヘソとしての役割が期待されているのだろう。ホーチミンで日本の出方を見て、即座にこちらの一番嫌がるプレーをやってのけた時のように。

 もっとも今回の日本戦では、ベテランの意図を若手選手がうまく汲めなかったようだ。彼女と周囲とのリズムはいまひとつ合わず、ボールの落ち着きどころにはなり切れていなかった。

 だが中盤にヘソがないのは、なでしこも同じだった。

【次ページ】 交代を繰り返すも、最後までボランチは機能しなかった。

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