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ビラノバが電話とチャットで指揮!?
バルサの深刻な危機にある裏事情。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2013/03/08 10:31

ビラノバが電話とチャットで指揮!?バルサの深刻な危機にある裏事情。<Number Web> photograph by Getty Images

チーム不調の中にあってもメッシは「こういった事態には慣れていないが、仲間たちと一緒に抜け出せると信じている」とコメント。ビラノバ監督も3月中に復帰と噂されているが……。

 ほんの1カ月ほど前まで圧倒的な強さを見せていたバルサが深刻な危機に陥っている。

 2月16日のグラナダ戦あたりから様子がおかしくなり、20日のCLミラン戦でまさかの敗北。続くリーガのセビージャ戦はなんとか逆転勝利したが、国王杯のマドリー戦でまたもや苦杯を嘗めると、その4日後、雪辱を誓って臨んだリーガのマドリー戦で、クリスティアーノ・ロナウドやエジル、ケディラをベンチに残す飛車角落ちの相手に再び敗れた。51年ぶりの13試合連続失点というおまけつきで。

 '08-'09シーズン以来、バルサは毎年1月末から3月上旬にかけてパフォーマンスを落とす。

 調整上、コンディションの谷間に当たるのがちょうどこの時期とされており、事実'08-09'から昨季までのリーガ152試合で記録された11敗25引き分けのうち4敗4分けはここに集中している。国王杯やCLを含めて過去4シーズンで3度しかない連敗のうちの1つも、やはり'08-'09のこの時期に喫している(あとは'08-'09の優勝決定後と、昨季4月のCLチェルシー戦とリーガのマドリー戦)。

 それを踏まえて結果だけを見るなら、今回の連敗は「たまたま」と言えなくもない。相手がミランやマドリーといった強敵でなかったら、引き分け続き程度でスランプを脱していた可能性はある。

治療中のニューヨークから監督が逐一指示を送るが……。

 しかし、敗れた試合の内容に注目すると、そんな楽観視はとても許されない。

 どの試合もバルサのボール支配率はいつものように60%を優に超えていたが、枠内へ飛ばしたシュート数はミラン戦で2本。マドリーとの2試合もそれぞれ3本と2本。つまり、ボールを持ってはいたけれど、攻勢にあったわけではないのだ。ボールをキープして、攻めて守って試合の主導権を握るチームが相手の掌で転がされていただけとなると、これはいただけない。

 では、いったいバルサに何が起きたのか。

 明確な答は誰に出せるものでもないが、チームに足りなかったものはハッキリしている。

 ビラノバ監督の存在である。

 ビラノバは昨年12月に手術した耳下腺癌の治療を受けるため現在ニューヨークに滞在しており、試合に当たっては彼の地から逐一指示を出している。インターネットを使って試合を観て、電話やチャットアプリを用いてベンチと連絡を取り合っているのだ。実際フィジカルトレーナーが電話を受け、ビラノバからのメッセージを代行監督ジョルディ・ロウラに伝える姿がテレビカメラに捉えられており、ロウラも全てがビラノバの指示通りであることを認めている。

【次ページ】 戦術面の準備不足にも現れる“遠隔操作”の限界。

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