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ブックディレクター幅允孝が
選ぶ2012年の印象的な6冊。
~年末に読みたいスポーツ本~ 

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posted2012/12/14 06:00

ブックディレクター幅允孝が選ぶ2012年の印象的な6冊。~年末に読みたいスポーツ本~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

ブックディレクター幅允孝さんが選んだ、今年のスポーツ本で印象深かった6冊。左上から時計回りに『THE green soccer journal』、『カーボン・アスリート 美しい義足に描く夢』、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』、『馬語手帖 ウマと話そう』、『レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか』、『覚悟 理論派新人監督は、なぜ理論を捨てたのか』。

 2012年もスポーツにまつわるさまざまな刊行物が店頭に並んだ。今年も残すところあと半月。ブックディレクターの幅允孝さんに「年末までに読んでおきたい6冊」をあげてもらった。

『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』 (高橋秀実著 新潮社)

「開成高校はご存じの通り、超進学校で、野球部のグラウンドは狭いし、練習時間も限られている。強くなる要素がほとんど見受けられない中で、彼らは知性を駆使して、野球を違った視点から解釈するんです。例えば守備については、(1)打球に反応(2)捕獲という2つの機能に分けて理解した上で、それを同時に行なうことは例外とする。エラーは伝統ですからと割り切る一方、1番打者から順に強打者を並べて大量得点を狙うギャンブル性の高い野球を展開している。バッティングの難しさは“球が前から来ること”と表現するところなんか、まさに根源的な問題を突きつけられてるようで、はっとすると同時に爆笑してしまいましたね」

『覚悟 理論派新人監督は、なぜ理論を捨てたのか』 (栗山英樹著 KKベストセラーズ)

「栗山さんは29歳で現役を引退して、その後は解説者として20年以上も伝え手の立場にいた。何となく理論の人だと思っていたのですが、彼は監督になって滅私の精神で自分を殺し、一度理論をかなぐり捨てるんです。印象的だったのは“チームのために戦わなくていい。まずは自分の夢と大切な人のために戦え”と言ったことですね。采配を見ていても野村監督に教えられた“覚悟に優る決断なし”という哲学を実践していた気がします」

『レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか』 (ヴァンサン・デュリュック著 講談社)

「これは2010年6月20日、南アW杯の最中にフランス代表が演じた前代未聞の練習ボイコットの内幕を描いています。フランスでは“もの凄く精巧にできた死体解剖書”、つまり死体は解剖しても生き返らないというウィットで評されていますが、ちょっとした芸術に近い死体解剖書だと思うしミステリーとしても読める。ただ、アーセナルファンである僕の神様・アンリ、あなたもか! というのがわかってかなりショックでしたが……」

【次ページ】 サッカー、馬、義足……それぞれに興味深い側面が。

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