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谷亮子の参院選出馬で、
“決断”を迫られる全柔連。
~「当選しても現役続行」の波紋~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKYODO

posted2010/06/20 08:00

谷亮子の参院選出馬で、“決断”を迫られる全柔連。~「当選しても現役続行」の波紋~<Number Web> photograph by KYODO

6月5日、谷はJR千葉駅前で女性スポーツ選手の出産や現役復帰への環境整備などを語った

 参議院議員選挙が近づいた。例によってと言うべきか、スポーツ界からも名乗りをあげる人が相次いだが、もっとも注目を集めるのが柔道の谷亮子である。谷は北京五輪で銅メダルを獲得したあと、出産と育児のため競技を休養していたが、今年5月、記者会見を開き立候補を表明。突然の発表もさることながら、人々を驚かせたのは、当選した場合も「現役生活を続行し、ロンドン五輪の金メダルを目指す」と語ったことだった。

 それに対し、批判的な論調が相次いだ。

「政治を軽く見ている」

「そんなに金メダルは甘くない。他の選手にも失礼だ」

「かけもちなど無理だ」

谷亮子の立候補が柔道界に問いかけるもの。

 とはいえ、現実的にどれだけ難しかろうと両立を志すのは自由だし、結果を受け止めるのも本人だ。両方を目指すこと自体に是非はない。言えるのは、谷の立候補によって周囲が様々なことを問われることになったということだ。有権者は政治家として託せると判断して票を投じるのか否か、メディアはどのような姿勢で報じるのか。なによりも、柔道界が谷に対するスタンスを問われることになる。

 というのも、これまで全日本柔道連盟(全柔連)には谷を優遇していると見られておかしくない面があったからだ。谷も名を連ねるナショナルチーム指定選手は、大会や合宿などへの参加が義務付けられる。しかし谷は、出産と育児のために参加しなくても、強化費などで優遇される強化指定選手から外されずにきた。

五輪3連覇の野村忠宏との処遇の違いに違和感も。

 五輪連覇などの実績が図抜けているからよいのではないか、という意見もあるかもしれない。しかし、例えば五輪3連覇の野村忠宏は、怪我のため出場を求められた大会を欠場すると、あっさり強化指定から外された。怪我と育児とでは事情は異なるとの見方もできるだろう。そこに一定の考慮の余地はあるかもしれない。だが、それに違和感を抱く選手がいなかったわけではない。また、今後、谷が当選した場合、議員活動を始めるわけで、育児は言い訳にできなくなる。

 全柔連の吉村和郎強化委員長は「11月の講道館杯には出場を」と語っているが、谷は「復帰は年末か年始あたりに」と言う。言葉どおりなら講道館杯に出場しないことになるが、そのときどう対応するのか。全柔連の判断が注目される。

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