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<独占ロングインタビュー> 木村沙織 「1億円プレーヤーの決意」~世界最高峰リーグへの挑戦~ 

text by

吉井妙子

吉井妙子Taeko Yoshii

PROFILE

photograph byShin Suzuki

posted2012/09/19 06:00

ロンドンで全日本女子を28年ぶりの銅メダルに
導いたエースが10月、世界最高峰のトルコリーグに挑む。
年俸は女性アスリートとしては破格の1億円。
バレー界の未来を拓くために――その覚悟を語る。

 日本女子スポーツ界に“1億円プレーヤー”が誕生した。ロンドン五輪で28年ぶりの銅メダルを獲得した全日本女子バレーのエース・木村沙織である。

 これまでもバレーだけでなくサッカー、バスケット、卓球など少なからず海外のチームで活躍する女子選手はいたものの、移籍の条件として日本からスポンサーを連れてくることを求められるか、年俸が支払われても現地で生活するのがやっとというのが相場だった。女子選手にとって、海外でプレーするということは、武者修行という様相を呈していたのだ。

欧州各国、中国が争奪戦を展開して、1億円を上回る金額提示も。

 昨年末から、欧州のエージェントの間では“誰が日本の「キムラ」を口説き落とすか”というデッドヒートが繰り広げられていた。実際、トルコ、イタリア、ロシア、フランス、中国など数カ国のチームが獲得に名乗りを上げる中、トルコへの移籍を決断した。アゼルバイジャンのあるチームは、トルコのワクフバンクが提示した1億円を上回る金額を内示。だが木村は金額の多寡より環境やリーグのレベル、活性度を優先し、最終的にトルコのワクフバンクを自身初の海外移籍先に選んだ。

 なぜ木村にこれほどまでの高額な年俸が支払われることになったのか。ロンドン五輪で見せた、木村のパフォーマンスの高さを知れば、誰もが「1億円」という価値に納得するに違いない。

 中国を破り、韓国と銅メダルを争ったロンドン五輪が終わって、10日ほどが過ぎていた。念願のメダルを獲得したせいか、陽だまりに咲いたタンポポのように、いつものホンワカした笑みを浮かべている。

「オリンピックの後は挨拶まわりや、自分の引越しもあってめっちゃ忙しかったんですよ。今も、せわしない日々を送っているんですけどね。先日の銀座パレードは、感激しました。あんなに大勢の人を見たのは初めてだったし、皆さんの嬉しそうな顔を見ながら、私たちが試合をしていた同じ時間帯に、日本中が私たちと同じ思いでいてくれたんだと分かり、凄く感動しました」

饒舌ではなかった木村が次々と言葉を繋ぐ、五輪の鮮烈な印象。

 決して饒舌とはいえなかった木村が、ロンドン五輪の話題になると、次から次へと言葉を繋ぐ。しかも、とろけそうな笑顔を浮かべるのだ。彼女にとって、ロンドン五輪の成果がいかに大きなものだったかが分かる。

「表彰式の国旗掲揚は、すごく印象に残っています。だって日の丸の隣にブラジルとアメリカの国旗が上がっているんですよ。やっと、この2大強豪国の隣に来れたんだな、って」

<次ページへ続く>

【次ページ】 セッターの竹下が「うそーっ」と驚いたほどの潜在能力。

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