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鷹の新エース・大隣憲司は、
家族のためにマウンドへ。
~6年目左腕の“モデルチェンジ”~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKYODO

posted2012/09/13 06:01

鷹の新エース・大隣憲司は、家族のためにマウンドへ。~6年目左腕の“モデルチェンジ”~<Number Web> photograph by KYODO

8月24日のロッテ戦で12勝目。秋山監督(左)も「緊張感のなかでよく投げた」と絶賛した。

 昨年、日本一に輝いたソフトバンクにとって、ホールトン、杉内俊哉、和田毅が抜けた“43勝”をいかに穴埋め出来るかが今シーズンの鍵だった。彼らの代役としてチームを牽引しているのが、6年目の大隣憲司だ。

 シーズン前、秋山幸二監督は「いなくなったんだから仕方ないじゃん。いる人間で頑張るしかないよ」といつもの口調で泰然自若に構えていたが、担当コーチへの指示は厳しかった。高山郁夫投手コーチはこう振り返る。

「攝津(正)と山田(大樹)を中心に、大場(翔太)、岩嵜(翔)、大隣の3人でローテーションを廻せるようにしてくれと言われました。大隣は気が乗らないとダメなタイプ。良いときは手がつけられないけれど、打たれだすと止まらない。監督には、心中する気で我慢して使ってくださいと言いました」

 その高山でさえここまでの大化けは想像していなかった大隣は9月11日現在、防御率(1.79)と勝ち星(12勝)はリーグ2位、勝率(.706)は同3位と、ソフトバンクになくてはならない存在に成長した。

三振を狙いに行くより、家族のために生活を懸けたピッチングを。

 京都学園、近大を経てプロ入りした大隣は2年目に11勝を挙げるも、その後は二桁に届かず、昨年は3勝。全力で三振を取りにいくピッチングだけでは勝ち星を重ねられず、悩んだ大隣は、あるとき先輩の新垣渚にこんな質問をしている。

「子供ができると生活は変わりますか?」

 ひじ痛に悩んだ新垣は、従来の投球スタイルを捨て、勝利に徹する投球で4年振りの勝利を挙げていた。「家族のためなら何でも出来るよ」と答えた新垣はしばらく時間を置いてから、「昔はお前に似ていたことがあったんだ」とつぶやいたという。新垣の一言に、大隣は自分の置かれている立場を考え直した。“三振を狙いにいくよりも低めに徹して、家族のために生活を懸けたピッチングをしよう”と心掛けるきっかけになったのだ。

 8月31日、首位を争う日本ハムとの一戦に登板。結果は引き分けだったものの、7回途中まで投げ1失点と試合を作り、「相手エースの吉川(光夫)よりも先にマウンドを降りたのが悔しい」と語った。高山コーチは大隣の安定感を評価し、「常日頃から力に頼るなと言い続けたが、ようやくわかってくれた」と目を細める。未完の大器が今、開花したのだ。

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