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好きな言葉は「気迫」。
NYが認めた黒田博樹の志。
~常勝軍団でつかんだエースの座~ 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2012/09/10 06:00

好きな言葉は「気迫」。NYが認めた黒田博樹の志。~常勝軍団でつかんだエースの座~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

8月19日のレッドソックス戦ではイチローの2本塁打もあり8回1失点で12勝目を挙げた。

 いかにも、黒田博樹らしい言葉だった。8月14日のレンジャーズ戦。6回まで無安打の好投を続け、メジャー屈指の強力打線相手に、わずか2安打で完封勝利。中盤は地元ヤンキースタジアム全体が大記録への期待感で緊迫し始めていたが、黒田は偉業を逃しても、柔らかい笑顔でサラリと言った。

「ノーヒットノーランをして10勝プラスしてくれるんだったら必死に狙いますけど、同じ1勝なんでね。それよりも0点に抑えてチームが勝たないと意味がないですから」

 強力打線が揃うア・リーグ東地区で防御率3点台前半をキープすることは、決して簡単ではない。その一方で、広島、ドジャース時代から不思議と打線とのかみ合いが悪く、勝ち星には恵まれていなかった。ヤンキースに移籍しても、その傾向は変わらず、4日のマリナーズ戦では7回途中まで1失点と踏ん張っても敗戦投手となるなど、好投が報われない試合は多い。それでも、ジラルディ監督の信頼は変わらず、11勝目を挙げた試合後には、あらためて高い評価を口にした。

「ヒロキの安定感は抜群だ。本当なら14~15勝していても不思議ではない」

「僕は、自分が投げる試合でベストの投球をするだけです」。

 広島時代から「男気」あふれる投球で、黙々と先発マウンドを守ってきた。決して大口をたたかず、勝ってもおごらず、負けても言い訳をしない。好きな言葉は「気迫」。近年の若い選手とは違って、昭和の匂いすら漂う。今でも、かつて名勝負を繰り広げた同年代の松井秀喜の名前を、最大のライバルとして挙げることにためらいはない。常にチームの勝利を第一に考え、登板が近づくにつれて気持ちを追い込む。常々、「野球を楽しむという感覚はない」と話すなど、勝つことに対する執着心は生半可ではない。

 しかも、今季は常勝を義務付けられたヤンキースで、開幕から先発ローテの中軸を担ってきた。その間、サバシア、ペティットらの実力者が故障で離脱。公式戦の佳境で、事実上のエースとして期待される立場となった。

「でも、人の分まで勝つことはできない。僕は自分が投げる試合でベストの投球をするだけです」

 視線の先は、プレーオフ、そして28回目の世界一。重圧が大きければ大きいほど、黒田の気迫は高まっていく。

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黒田博樹
ニューヨーク・ヤンキース

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