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44年ぶりのメダルを呼んだ、
アマチュア界の大改革。
~日本ボクシング躍進の背景~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byAFLO

posted2012/08/20 06:00

準々決勝で勝利し、歓喜を爆発させる清水。準決勝では敗れたが、見事、銅メダルに輝いた。

準々決勝で勝利し、歓喜を爆発させる清水。準決勝では敗れたが、見事、銅メダルに輝いた。

 ロンドン五輪開幕の少し前、日本アマチュアボクシング連盟の山根明会長が怒っていた。ある席で一緒になったプロの某元世界チャンピオンに「どうして日本のアマは弱いんですか」と尋ねられた、失礼な話ではないかというのだ。

 ロンドン五輪では清水聡、村田諒太が大活躍し、44年ぶりのメダリストが誕生した。日本アマチュアボクシング史上空前の成果を上げた大会として記憶されることだろう。そして今頃、某元世界チャンピオンは後悔しているに違いない。

 これは偶然の産物ではない。確かに少し前まで「日本のアマチュアボクシングは弱い」は世間の常識だった。日本の五輪史上、ボクシングでのメダル獲得は僅かに3例、しかも同一大会に2人のメダリストが誕生したことなどなかった。メキシコ大会を最後にメダルとは無縁。それどころか近年は、世界の5地域ごとに出場権を争うように予選方式が改められてからは、代表がゼロになるのではとヒヤヒヤさせられたものだった。

 しかし今回は違った。五輪予選を兼ねた世界選手権で2位となった村田をはじめ、国際大会で勝てる選手が増えた。日本のアマチュアボクサーの潜在能力を引き出し、力を発揮できる環境を整えたという点で、山根明会長の手腕を認めないわけにはいかないだろう。

「選手が主役」をモットーに改革を進めた、山根明会長の手腕。

「改革」を標榜して昨年会長に就任した山根氏は、「選手が主役」をモットーに、次々と手を打った。プロとの交流を解禁し、国際試合に積極的に選手・役員を派遣し経験を積ませ、プロ経験者のアマ復帰を積極的に承認した。五輪やアジア大会など主要な国際大会には「選考会」を実施して代表を決めるようにした――この当然のことがこれまでは疎かにされていたのだ。以前のように全日本選手権の優勝者から代表を決めていたら、今回の清水もロンドン行きの機会を閉ざされ、諦めて引退していたかもしれない。

 閉鎖的でなかなか情報を出したがらない組織が、WEBサイトを立ち上げ、積極的に情報発信するようになったのも山根体制になってからだ。剛腕との評もあるが、予想される抵抗を抑え込み、短期間にこれだけの改革を断行するのに要するエネルギーも並大抵ではあるまい。長年の「鎖国主義」を改めたのが、ロンドンの成果となって結実したと評価したい。

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