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「拳児たちの甲子園」が、
育成年代を強化する。
~ボクシングU-15全国大会の意義~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byBOXING BEAT

posted2012/09/26 06:00

「拳児たちの甲子園」が、育成年代を強化する。~ボクシングU-15全国大会の意義~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

大会には女子の部もあり、長い髪の毛を振り乱しながら必死に小さな拳を繰り出していた。

 球児の甲子園ならぬ、拳児の後楽園――今年が5回目となるU-15全国大会が9月2日に開催され、4地域の大会を勝ち抜いた小中学生53組106名がボクシングの聖地で熱闘を展開した。

 この大会は15歳以下の選手たちを対象としたもの。以前は年齢制限で認められなかった年代の公式戦の存在が、アマ・プロ問わずボクシングの底辺を拡げ、レベルアップに繋がっている――と、開催に特に力を入れてきた大橋秀行・日本プロボクシング協会会長も自賛するが、確かにその言葉通りである。

 小学生の選手たちが懸命に殴り合う光景はユーモラスでもあり痛々しくもあるが、中学2、3年生ともなると、中にはインターハイ決勝と変わらない技術を披露して関係者を瞠目させる選手もいる。敗北に悔し泣きし、それでも礼儀を忘れず審判に挨拶する姿は感動的だ。

 アマ・プロ双方から派遣された公認審判が採点をして、勝敗を出す。そこまでやらせなくてもという声もあろうが、この実戦経験こそが肝要なのである。

観客の前での実戦こそが、キッズ世代の競争意識を刺激する。

 幼い子供にボクシングをさせるのは昔から珍しくなかったし、ロンドン五輪の2人のメダリスト、金の村田諒太も銅の清水聡も中学生からジムに通い始めている。だが、今のように全国的に組織化された大会はなく、ジムでのスパーリングはできても観客の前での実戦を経験することはできなかった。実戦こそキッズ世代の競争意識を刺激し、モチベーションを維持し、能力向上に繋がるもの。今年のU-15大会を観て「僕の頃よりレベルが高くなっています」と認めたのは、第1回大会に出場し、いまプロデビューが注目される「怪物クン」井上尚弥だ。

 遅ればせながら、日本アマチュアボクシング連盟も今年から「幼年ボクシング」の名で小中学生の選手を対象とした全国大会をスタートさせた。キッズ世代の選手養成はさらに本格化するはずだ。

 ロンドンの「金1・銅1」という結果は、今後のボクシング界にとって高いハードルにもなった。いま村田、清水に代わってメダルを期待できる選手がいるかと言われれば、即答は難しいが、例年五輪が終わった直後はこんなもの。やがて新たな希望の星が現れ、それが「U-15」や「幼年」の大会の出身だったとしても、なんら不思議はないだろう。

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