日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
W杯最終予選に必要な最後の一枚。
永井謙佑はジョーカーたり得るか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/09 10:30
U-23代表では11試合出場8得点と結果を残しているが、A代表では1試合出場にとどまっている永井謙佑。今後の活躍次第ではA代表とロンドン五輪代表の掛け持ちの可能性もある。
ブラジルW杯最終予選のスタートまであと2カ月を切った。
足しげくJリーグの試合を視察するアルベルト・ザッケローニが新たな人材を探しているのは間違いない。特に意識しているのは、試合の流れを変えてゴールに結びつけることができる「ジョーカー」ではないだろうか。
2月のアイスランド戦では新戦力の石川直宏を、続く3次予選ウズベキスタン戦ではザックジャパン復帰組の乾貴士を後半途中から起用して新たにテストしたが、彼らは及第点の内容ながら強烈なインパクトまでは残せなかった。ボルトンから招集した宮市亮に関しては起用すらされていない。昨年、途中起用のなかで結果を出してきた万能タイプの清武弘嗣を「一の矢」とすれば、「二の矢」が誰なのかいまだはっきりと見えてこない状態である。ただ、石川、宮市を招集するあたり、ザッケローニはスピードを武器に持つタイプを探しているように思えてならない。
アシストよりもシュートを選ぶ永井謙佑に見る変心。
スピードと言えばやはりこの人、永井謙佑である。
50m5秒8という快足ぶり。初速からすぐにトップギアに入れられるスピードはJリーグレベルではケタ違いだ。とはいえ、名古屋グランパス入団1年目の昨季は得点に結びついていかなかった。リーグ戦ではわずか3得点にとどまった。
しかし今年の永井はひと味違う。
第2節のFC東京戦ではFKからのこぼれ球をねじ込んで初ゴールをマークし、4月3日のACL天津泰達戦(アウェー)でもカウンターから右サイドを飛び出して角度のないところからゴールを決めている。この試合では自陣からのカウンターの際、爆発的なスピードで一気に右サイドを駆け上がってボールを受け取り、一人飛ばしてファーで待つ玉田圭司にパスを出してアシストも記録。しかし、アシストシーンに満足することなく試合終盤にゴールを叩き出したあたりが、意識の変化と言えるだろう。
天津戦の前に行なわれたアウェーの大宮アルディージャ戦(3月31日)にはスタンドにザッケローニの姿もあった。先発した永井がシュートにこだわっていたのが実に印象的だった。CKのクリアミスで自らボールを奪うと迷うことなくシュートを選択する場面もあれば、強引な形でシュートまで持っていこうとする場面もあった。“自分で決めたい”という思いが記者席から見ていてもヒシヒシと伝わってきた。