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早大再生を託された、
無名のコワモテ新監督。
~ラグビー部を導く後藤禎和の手腕~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2012/03/19 06:01

早大再生を託された、無名のコワモテ新監督。~ラグビー部を導く後藤禎和の手腕~<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

「じゃあ、オールブラックス、適当に散らばって!」

 日本のラグビー界に、あまたいるコーチでも、天下の世界最強軍団に向かってこんな「上から」セリフを発した人は他にいないんじゃないか。

 発言者は、今春早大の新監督に昇格が決まった後藤禎和FWコーチである。'10年11月30日、オールブラックスのFLジェローム・カイノ、SHジミー・カウワン、LOアンソニー・ボーリッチの3選手が上井草を訪れたときのことだ。

 といっても、早大コーチとしてエラぶっていたわけではない。彼には「NPO法人ワセダクラブ事務局長 ラグビースクール校長」という肩書がある。冒頭のセリフは、これから指導する子どもたちのウォームアップで、相手役を務める大人、つまり仲間に向けてのものだった。「らしい」言葉だなあ、と思った。

 後藤新監督は、都立日比谷高から一般入試で早大に入学。まったくの無印ながら、3年からLOでレギュラーに。持ち味はあくまで強気な姿勢だ。キックオフやラインアウトだけでなく、コンタクトプレーでも細身の体躯で激しく前へ。4年では同期の清宮克幸主将とともに、中軸として大学選手権優勝を支えた。

ラグビーの普及に尽力した経験を早大再建にどう活かすのか?

 卒業後は新興のヤマハ発動機に進み、関西社会人リーグ3部から1部への躍進を牽引。現役引退後は豪州に自費留学し、'00年から早大のコーチングスタッフに。益子・清宮・中竹・辻と4代の監督を陰で支えながら、ワセダクラブで子どもたちを指導し、小中学校や小さな区民集会所を回って普及に尽力した。言葉は荒っぽくても、ピッチの内外でハードワークを重ねてきた経歴は、相手の心を瞬時に掴んでしまう磁力を持っている。

 布巻峻介らトップ級の才能を集めながら、過去3季のうち2度は8強止まりの早大。新年度は東福岡から7人制日本代表の藤田慶和も加入する。救世主と期待される一方、世界レベルの才能を預かる重責も負う。強化と育成の両立は難しそうだが、新監督は「もちろん、代表などの活動には最大限サポートします。日本のラグビーのためですから」と明言した。

 元主将でもなく、日本代表経験もない監督は早大では異例だが、普及の現場で汗した経験は魅力だ。一見コワモテな新指揮官の手腕に注目したい。

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