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興南のセンバツ制覇を完全分析。
沖縄勢の強さに特別な理由アリ!! 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/04/08 10:30

興南のセンバツ制覇を完全分析。沖縄勢の強さに特別な理由アリ!!<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

沖縄県勢の優勝は2年ぶり3度目。九州・沖縄勢は一昨年の沖縄尚学、昨年の清峰(長崎)に続き、センバツ3連覇を達成した

 春のセンバツ大会は沖縄・興南が初優勝を飾った。好左腕・島袋洋奨を擁しながら昨年春が富山商に0対2(10回、被安打6、奪三振19)、夏が明豊に3対4(8回3分の2、被安打9、奪三振9)と1回戦負けを喫していることもあり、大会前の評価は伏兵どまり。2回戦の智弁和歌山戦後、我喜屋(がきや)優監督にどんな気持ちで初戦を戦ったのかと聞くと、笑みを浮かべながら「鉛のユニフォームをまとっているようでした」と選手の緊張ぶりを話してくれた。

 そういうガチガチの固さは初戦の関西戦で見られたが(6回終了時点で2対1の僅少差)、ここを4対1で乗り切ると、智弁和歌山を7対2、準々決勝の帝京を5対0、準決勝の大垣日大を10対0、決勝の日大三を10対5で破り、興南としては大会初優勝、県勢としては'08年の沖縄尚学以来3回目の優勝を沖縄にもたらした。

エース島袋“左腕トルネード”の秘密とは。

 勝因の第一に挙げられるのは島袋の力投だ。大量得点差がついた大垣日大戦こそ7回で降板したが、あとの4試合はすべて完投(帝京戦は完封)。通算5試合・46回投げて、被安打35、奪三振49、四死球15、防御率1.17という素晴らしい成績を残した。

 島袋の投球フォームは“トルネード”が愛称になっているように、始動からトップを作るまでの大きい上体のねじれに特徴があるが、多くの平凡な投手のように「横回転のねじり返し」で投げるのではなく、トップを作ってからは直線的な動きで打者に向かっていくところに最大の長所がある。この動きがなければ、左打者の内角いっぱいに腕を振ってストレートを投げ込むことはできなかっただろう。

 興南各打者も素晴らしかった。とくに注目したのが4番の眞栄平(まえひら)大輝(一塁手)で、打席の中での極端に小さい動きに目が釘づけになった。バットを引く動き以外ではごく小さく足を引いて、ステップするくらいのもの。無反動に近いと言ってもいい。智弁和歌山戦後、「どうしてこんなに小さい動きで打つようになったの?」と聞くと、「大きい動きだと、全国レベルの速い球には対応できない」と我喜屋監督に入学早々言われたからだと話してくれた。

 筆者は試合を見るときは必ずノート持参で観戦し、いいと思った選手には☆、◎、○の順に印をつけるが、眞栄平には智弁和歌山戦と帝京戦に☆印をつけた。ちなみに、センバツ期間中、投手、野手に限らず☆印をつけた選手は眞栄平以外、1人もいない。

 眞栄平以外にも触れると、興南各打者は1人の例外もなく浅い縦軌道でバットを振り出していた。捕手寄りのポイントでボールをとらえ、逆方向に強い打球を飛ばせるのは、このスイング軌道と、「後ろ小さく、前大きい」打撃フォームをモノにしていたからである。言ってしまえば我喜屋監督の教育の賜物である。

【次ページ】 沖縄県勢を底上げした「野球部対抗競技大会」とは。

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