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勝利とフェアプレー。
~なでしこ、もう一つの快挙~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byKYODO

posted2011/08/29 06:00

勝利とフェアプレー。~なでしこ、もう一つの快挙~<Number Web> photograph by KYODO

女子W杯で優勝と同時にフェアプレー賞も受賞したなでしこジャパン。FIFAが選ぶ今大会の優秀選手21人にも、海堀あゆみ、澤穂希、大野忍、宮間あやなど、アメリカと並んで最多の4人が選出された

 澤穂希が表彰台でW杯トロフィーを頭上に掲げた時、ようやく「本当に優勝したんだな」と多くの人が実感したのではないだろうか。大陸予選を含めれば122の国と地域が参加した今大会。その頂点に、日本が立った。通算0勝7敗1分だったドイツを準々決勝で撃破。同じく、通算0勝21敗3分だった米国を決勝で倒した。なでしこジャパンが示したのは「すべてのデータは、結局のところ過去の結果に過ぎない」という真理だった、とも言える。

 文字通り、世界をあっと言わせたビッグアップセット。だが、今回のなでしこジャパンの優勝の価値は、番狂わせを起こしたという点に止まらない。彼女たちは、優勝と同時に、フェアプレー賞も受賞したのである。この賞は、ファウルや警告(イエローカード)、さらには退場の数が少なく、クリーンにプレーしたチームに与えられるものだが、1991年に始まった女子W杯の歴史上で、優勝チームがフェアプレー賞も受賞したのは初めてのことなのだ。

最もクリーンにプレーして頂点に立つという理想を初優勝で実現。

 男子のW杯では、'78年大会のアルゼンチン、'94年大会のブラジル、'98年大会のフランス、そして2010年大会のスペインが、優勝とフェアプレー賞を同時に受賞している。しかし女子では今回の日本が初めてで、最もクリーンにプレーして頂点に立つ、という一つの理想を、初優勝で実現したのである。

●サッカー女子W杯 8強の90分平均のファウル数・警告数
順位 国名 試合 合計時間 ファウル数 警告数 退場
合計 90分平均 合計 90分平均
1 日本 6 600分 55  8.25 5 0.75 1
2 米国 6 600分 72 10.80 6 0.90 1
3 スウェーデン 6 540分 82 13.67 6 1.00 1
4 フランス 6 570分 69 10.89 5 0.79 1
5 ブラジル 4 390分 46 10.62 7 1.62 0
5 イングランド 4 390分 40  9.23 5 1.15 0
5 ドイツ 4 390分 46 10.62 6 1.38 0
5 オーストラリア 4 360分 28  7.00 5 1.25 0

 上位8チームのファウルと警告の数は別表の通り。延長戦が2回あった日本は、6試合通算で600分を戦って、ファウルは55回、警告は5回。90分平均に換算すると、ファウルは8.25回で、オーストラリアに次いで2番目に少なく、警告は0.75回で、最少だった。退場は1回で、これは6試合を戦った4強の各チームはいずれも同じだ。日本の退場は、米国との決勝戦、延長の終了間際に、ペナルティエリアのすぐ外で、決定的なピンチを止めたDF岩清水梓のタックルにレッドカードが出たもの。これはビデオで見返しても、レッドカードに値するほど危険なものだったとは思えないが、いずれにしても日本は、データからも総合的な印象からも、今大会で最もクリーンなプレーをしたと言っていいだろう。

【次ページ】 警告が少ないのは日本女子サッカーの誇るべき伝統。

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