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10種競技の快記録。
~日本人の壁を破った右代啓祐~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

PROFILE

photograph byKYODO

posted2011/07/06 06:00

10種競技の快記録。~日本人の壁を破った右代啓祐~<Number Web> photograph by KYODO

川崎市等々力陸上競技場で行われた日本選手権混成競技。最終日の6月5日、男子十種競技で日本新記録をマークして笑顔を見せる右代啓祐

 単なる決まり文句ではなく、論理的な結論としても「キング・オブ・アスリート」といえば、陸上競技・10種競技の金メダリストになる。パワーとスピード。瞬発力と持久力。「運動能力」と呼ばれるもの、すべてを兼ね備えた総合アスリート。日本における注目度はあまり高くないが、それは長らく、世界で戦える日本人の10種競技選手がいなかったからだろう。

 6月5日、そういった状況を一気に変革する記念碑的な快記録が誕生した。日本陸上選手権・混成競技の最終日、10種競技で右代(うしろ)啓祐(スズキ浜松AC)が8073点の日本記録を樹立したのである。それまでの日本記録は1993年に金子宗弘(ミズノ)が記録した7995点。8073点は18年ぶりの日本記録であるとともに、日本人初の8000点オーバーという日本陸上界念願の記録だった。

「ずっとこの瞬間を望んでいた」と右代。最後の1500mでゴールしたあと、力尽きてうずくまりながら、歓喜の涙を見せた。

走り高跳びとやり投げから混成競技に転向した右代の武器。

 今回の記録には、いささか説明が必要な部分がある。8073点の日本記録は間違いないのだが、当日の優勝記録としては8076点になっていた。これは走り幅跳びで、追い風参考ながら1回目に6m97(807点)を跳んでいたためだ。優勝記録としてはこちらが採用され、合計得点も8076点になっている。しかし公認の日本記録としては、走り幅跳びも追い風参考ではない3回目の6m96が採用され、8073点となったわけだ。

 この記録は6月14日時点で今季世界ランキングの12位。まだ正式に代表選出は決まっていないが、夏の世界選手権での活躍も楽しみになってくる。

●陸上競技・男子10種競技 右代啓祐の日本記録8073点の内訳
  100m 走幅跳 砲丸投 走高跳 400m
第1日 11秒39
(776)
6m96
(804)
13m71
(711)
2m06
(859)
50秒28
(802)
 
  110mH 円盤投 棒高跳 やり投 1500m
第2日 14秒93
(858)
43m67
(740)
4m90
(880)
73m06
(936)
4分35秒83
(707)
※カッコ内の数字は各種目の点数。太字は今回記録した種目別の自己ベスト

 右代は北海道出身の24歳。最初は走り高跳びと、やり投げをやっていたが、札幌第一高校3年の時、混成競技に転向している。その後、196cm、92kgという体格を生かし、跳躍と投てきを軸にして成績を伸ばしてきた。

 昨年4月に日本歴代2位の7930点を出して以来、8000点突破への期待が高まっていた。今回、大台を突破できたカギはどこにあったのか、得点内容を詳しく見てみよう。

 8073点の内訳は別表の通り。10種競技では、それぞれの種目で、記録を点数に換算する計算式がある。全種目800点なら合計8000点になるから、右代の場合、800点以上の種目は得意種目、それ以下は苦手種目というふうに考えていいだろう。

【次ページ】 苦手だった走力の向上で、安定した高得点を狙う。

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