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「中年の星」ティム・ウェイクフィールド、
17年目の宿願達成。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2009/07/07 06:01

「中年の星」ティム・ウェイクフィールド、17年目の宿願達成。<Number Web> photograph by Getty Images

レッドソックスでもウェイクフィールドが投げるときは、正捕手・バリテックではなく、ナックルを捕れるコタラスが女房役を勤めている。

  最近は、大ベテランが若いとき以上の活躍をした途端に「薬を使っているのではないか?」と疑われることが普通となった。

 たとえば、フィリーズのラウル・イバニェス(37歳)。通算OPS(出塁率と長打率の和)は8割2分9厘にしか過ぎないのに、今季は10割2分7厘(ナ・リーグ3位、以下数字は7月4日現在)・本塁打22本(同4位)と「遅咲き」の大活躍。フィラデルフィアの地元紙、スポーツTV・ESPN等、メジャーなメディアも巻き込んで薬剤使用疑惑が論じられている(ドーピング論争が始まったのは、あるファンがブログで薬剤使用の可能性についてデータを分析したことがきっかけだった)。

ナックルボーラーにドーピング疑惑は無縁!?

 対照的に、年を取ってからどんなに華々しい活躍をしたとしても、絶対に誰からも「ステロイドを使っている」と疑われることのない選手がティム・ウェイクフィールドである。これまで1シーズン17勝が最多記録だった(’98年、’07年の2回)が、今季80試合終了時点で10勝はメジャー1位。42歳のロートル投手が最多勝争いに加わっているというのに、誰もドーピング疑惑を論じない。

 というのも、ウェイクフィールドは、メジャー史上有数のナックルボーラー。ナックルは、「筋力」ではなく「指先のさじ加減」で投げる「魔球」であることを、誰もが理解しているからである。

 「筋肉美」とはほど遠く、お腹がぽっこり出た体型はそこらへんの中年とまったく変わらないし、そのキャッチボールに毛が生えたような投球フォームともっとも縁遠い言葉は「力感」である。まだウェイクフィールドの名が日本で知られていなかった時代に、日本からの客をフェンウェイ・パークに案内したことがあるが、彼の投球フォームを初めて見た客達は、「真面目にやれー」と、ストリップ小屋で聞くような野次を飛ばしたものだった。

 ナックルボーラーは、「肩をこわした投手」とか「打てない野手」とかの前歴を持つ苦労人であることが多く、ウェイクフィールドも例外ではない。元一塁手の彼がナックルボーラーとしてデビューしたのはパイレーツ時代の’92年だったが’95年には解雇、マイナーリーグ契約でレッドソックスに拾われた。しかし、その後、4番手・5番手の先発投手として息長く活躍。7月3日には、ついにチーム最多先発記録(383試合)を達成、あのロジャー・クレメンスを追い越した。

<次ページに続く>

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