SCORE CARDBACK NUMBER

トニー・グウィンJr.が
追う偉大なる父の背中。
~伝説を受け継ぐ二世打者~ 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2009/07/08 06:00

トニー・グウィンJr.が追う偉大なる父の背中。~伝説を受け継ぐ二世打者~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 偉大な父親の背中を追うことになったとき、息子はどう立ち振る舞うのか。そんなことが気になって、26歳の青年に話を聞いてみたくなった。

 親子メジャーリーガーは数あれど、トニー・グウィン・ジュニアほどのサラブレッドはそう居ないだろう。殿堂入りした父を持つ選手は10人。通算2000安打以上の打者を父に持つ選手はたった3人。そのいずれにも彼が属しているからだ。そして父親が20年間の現役生活を一貫して過ごしたパドレスに、5月21日、トレードされてきた。

“ホーム”のパドレスへ移籍後に大ブレイク!

「僕はこのクラブハウスで育ったようなもの。絶好の遊び場だった。しかもサンディエゴで生まれ育ったから、ここは本当に快適な“ホーム”なんだよ」

 成績が如実に物語っている。'06年にブルワーズでデビュー。父と同じ7月19日に打った初ヒットは同じ二塁打だった。ただその後は鳴かず飛ばず。さらに今季はマイナー暮らしだったが移籍後は一転、27試合で打率3割4分8厘(6月21日現在)とブレイク真っ最中なのだ。「特に何も変えてはいない。みんなが“おかえり!”と温かく迎え入れてくれて野球に集中できる。それが一番なのさ」。球場前の通りに『トニー・グウィン・ドライブ』と名がつく場所に来て、果たして本当にプレッシャーはないのだろうか。「ないない! 僕はそんなことを感じるレベルですらないさ」とけれん味のない笑顔が、育ちの良さを改めて感じさせる。

偉大な父と比較されることも厭わない。

 父親を全く意識しない息子などいない。全面的に受け入れるのか、反発するのか。幼少から常に比較される環境にいた彼の場合、まず父親のほうが野球に関する話題を一切出さなかった。それによって息子は「父は父、僕は僕」とアイデンティティを確立した上で、自らの意思で野球の道を選んだ。だからこそ「僕が今こうしているのは間違いなく彼のおかげ。心から尊敬しているから、父のことを話したりするのは全然イヤじゃないんだよ」とあるがままを素直に受け入れることができるのだ。

「イチローやロリンズのような優れたリードオフマンになりたい」と目を輝かせる息子が追うのは、父親の背中ではなくリードオフとしての理想形。遡ればそれは、紛れもなくグウィンという稀有の打者につながっている。ふとそう思った。

■関連コラム► MLBの底辺拡大戦略は日本に何をもたらすのか? (2009年6月22日)
► 短いバットと200本安打。~イチローは100年前にもいた!?~ (2009年6月9日)

関連キーワード
トニー・グウィン・ジュニア
サンディエゴ・パドレス

ページトップ