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ヤンキース、19億ドルの計算違い。
~投手陣と新スタジアムの崩壊現象~ 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byJim Rogash/Getty Images

posted2009/05/06 06:00

ヤンキース、19億ドルの計算違い。~投手陣と新スタジアムの崩壊現象~<Number Web> photograph by Jim Rogash/Getty Images

 シーズンオフに総額4億ドルを超える大盤振る舞いをして大物FA選手3人(マーク・テシェラ、C・C・サバシア、AJバーネット)を獲得したヤンキースだが、開幕から3週が経った時点で、9勝10敗(首位レッドソックスに4ゲーム差)と出遅れている(以下、数字は4月27日現在)。

 チームOPS(出塁率と長打率の和)8割3分3厘はリーグ4位と打力はまずまずなのだが、チーム防御率6.26はリーグ最下位。「弱投」が低迷の最大原因となっている。契約期間7年・年俸総額1億6100万ドルで獲得したサバシアが1勝2敗防御率4.73、5年・8250万ドルで獲得したバーネットは2勝0敗防御率5.47と、二人ともまだ投資金額に見合う活躍をしていない。特にバーネットの場合、4月25日、肝心のレッドソックス戦で6対0とリードし楽勝のパターンだったのにKOされ、ライバルに3連敗を喫する主因を作ってしまった。

レッドソックスに競り勝ち獲得したテシェラが不調

 さらに、「チーム打力はまずまず」と書いたが、8年・1億8000万ドルで獲得したテシェラはOPS7割8分0厘と調子が出ず、負傷欠場中のA・ロッドの穴を埋めきれていないどころか、出遅れの「主犯」となっている。テシェラは、獲得に熱心だったレッドソックスをせせら笑うかのようにその鼻先から掠め取った選手。ペナント争いの「difference maker」となるはずだっただけに、ファンをがっかりさせている。

 一方、レッドソックスが首尾良くテシェラを獲得していた場合、不要となって放出されていたはずのマイク・ロウエルはOPS9割6分6厘(リーグ16位)・打点22(同2位)と予想外の打棒をふるっているのだから、皮肉な結果となっている。

 オフに大枚を投じて獲得した大物3人が、揃いも揃って「計算違い」だったのだから出遅れたのも当然だが、この3人の場合、いずれ本来の力を発揮するはずだからそれほど心配しなくてもいいだろう。

救援投手陣の弱体と新スタジアムの「空席だらけ」

 それよりも、真剣に心配しなければならないのは、防御率6.47(リーグ12位)と弱体ぶりが目立つ救援陣だ。ライバルのレッドソックスは、防御率2.41(リーグ1位)と最強の救援陣を誇っているだけに、こちらの方がdifference makerとなる可能性が高いのである。

 ところで、ヤンキースが計算違いをしたのは、大物FA獲得に要した4億ドルあまりの大盤振る舞いが効果を上げていないことだけではない。15億ドルの巨費を投じて建設した新スタジアムが、「連日満員売り切れ」となる期待を裏切って「空席だらけ」の惨状を呈しているため、両方併せて計算違いの総額が19億ドルを超えているのである。

 もっとも「空席だらけ」とはいっても、売れ残りの席は一人500~2500ドルという高価格帯の「プライム・シート」に集中、普通の価格帯の席は期待通りほぼ売り切れている。しかし、中継のテレビカメラに映るのはネット裏やグラウンドに近い「いい席」ばかりなので、テレビを見ていると、まるで「新スタジアム全体がすかすか」という印象を与えているのである。

ついに高額シートの大幅値下げに踏み切った

 ヤンキースの経営陣は「プライム・シートはすでに80-85%売れた」と言い張ってきたが、テレビの「空席だらけ」の映像を見る限り、「水増し」した数字だったとしか思えない。「超高額の席をつくれば大儲けができる」と目論んだ営業サイドが、責任逃れのために水増しした数字を発表してきたのかどうかは知らないが、4月28日、ヤンキースはプライム・シートの大幅値下げを余儀なくされた。

 たとえば、2500ドルの最特等席は半額の1250ドルに値下げされたが、これからプライム・シートを満席にすることができるかどうかは、値下げの効果そのものよりも、チームが低迷から脱するかどうかにかかっているのではないだろうか。「4億ドル超の大型補強をしたのに勝率5割辺りをうろうろする」という野球サイドの計算違いが是正されない限り、「15億ドルの新球場を建てたのに空席だらけ」という営業サイドの計算違いが是正されることもないだろう。

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