MLB Column from USABACK NUMBER

福留にかかる「カブス救世主」の期待。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/05/07 00:00

福留にかかる「カブス救世主」の期待。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 カブスの福留孝介が『スポーツ・イラストレイテッド』最新号(5月5日号)の表紙を飾った。しかも、「絶対やれる*」と、日本語の大見出しつきでの登場だったので笑ってしまったが、米国人読者にも日本語の意味がわかるよう、すぐ下に「 *It's Gonna Happen」と、英語表記を入れる念の入れようだった。

 カブス・ファンが「It's Gonna Happen(ここで、Itは100年ぶりのワールドシリーズ優勝の意)」を英日自動翻訳ソフトで誤訳、「偶然だぞ」のボードを掲げて福留を応援した話は前々回紹介した(註)が、『スポーツ・イラストレイテッド』最新号は、福留が「100年ぶりのワールドシリーズを達成するための救世主」として、ファンの期待を一身に集めている様子を紹介したのである。

 カブス・ファンが福留に入れあげている現況は「福留マニア」という言葉にも象徴されているが、打率3割4分2厘(ナ・リーグ9位。以下、数字は5月5日現在)、出塁率4割3分7厘(同5位)と、大活躍しているのだから人気が高くなるのも当然だろう。さらに、福留の場合は、ただ人気が高いだけでなく、一世紀ぶりの優勝への「救世主」と崇められているのだが、崇められる理由は、「福留が加入したおかげでチーム全体の打撃スタイルが変わった」と信じられているからなので、説明しよう。

 福留加入前のカブスは、たとえば、今世紀に入って出塁率が3割3分を超えたのは2回だけと、選球眼がとりわけ悪いことで定評があった。ところが、今季は、出塁率3割7分3厘(リーグ1位)と、見違えるような選球眼のよさを示し、高出塁率の効果でチーム総得点(189)もリーグ1位となっている。なぜ、突然選球眼がよいチームに変身したのか、昨季までとさほどメンバーは替わっていない事実を考えると、「好球をじっくり待つ」福留の打撃スタイル(1打席当たりの相手投手投球数4.41はリーグ2位)が他の選手に「伝染した」こと以外に、その理由が思いつかないのである。

 「選球眼のよさが他の選手に伝染するなどという馬鹿なことが起こるものか」と読者は疑問に思われるかもしれないが、これが起こるのである。たとえば、ヤンキースは、今でこそ出塁率が高いチームとしての定評を確立しているが、1991年3割1分4厘(リーグ12位)、1992年3割2分6厘(リーグ8位)と、1990年代の初めまでは、逆に、出塁率が低いチームとして知られていた。このヤンキースが選球眼がよいチームへと変身したのは、1993年にウェイド・ボッグズ(通算出塁率4割1分5厘は歴代26位。2005年殿堂入り)が加わったことがきっかけだったと信じられているのである。

 というわけで、「福留効果」で出塁率リーグ1位チームに変身したカブスだが、最後に出塁率でリーグをリードしたのはいつかというと、1945年までさかのぼらなければならない。そう、カブスが最後にワールドシリーズ進出を果たしたシーズンだが、ファンが、福留に「救世主」と期待をかける理由がおわかりいただけるだろうか。

(註)先日、ボストン・ブルーインズ(NHL)の選手が「ヤンキースは吸う」と日本語で書かれたTシャツを着てレッドソックスを応援しているシーンがテレビに映されたが、これも、誰かが「Yankees suck」を自動翻訳ソフトにかけて引き出した誤訳のようである。Suckに「吸う」の意があることは確かだが、「Yankees suck」のような用例では「ひどい、どうしようもない」の意となるのだが…。

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