MLB Column from WestBACK NUMBER

ガララーガ、最後の挑戦 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byYasushi Kikuchi

posted2005/03/29 00:00

ガララーガ、最後の挑戦<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 いよいよシーズン開幕まで秒読みとなった。ファンだけでなく選手たちも皆、それぞれに期待を胸にシーズン到来を待っていたはずだ。そして今回は、誰よりも複雑な心境で開幕を待ちわびているだろう選手を紹介したい。

 アンドレス・ガララーガ選手。もちろんメジャーのファンなら誰でも知っている名前だろう。1961年6月18日生まれの43歳。私が知る限り、ブレーブスのフリオ・フランコ(46歳)、アストロズのジョン・フランコ(44歳)に次ぐメジャー3番目の年長選手だ。現在はメッツとマイナー契約を結び、招待選手枠で開幕メジャー入りを目指している。状況はドジャースの中村紀洋選手と同じだ。

  (まだやっていたのか。もういいんじゃないか……)

 フロリダのキャンプ取材で、ペドロ・マルティネス投手とカルロス・ベルトラン選手のインタビューを取りにメッツ・キャンプを訪れ、ガララーガ選手を発見したとき、私の頭を過ぎった率直な気持ちだった。

 ロッキーズ在籍時には1996 年に本塁打、打点の二冠王に輝き、さらに翌97年も打点タイトルを連取。メジャー屈指の長距離砲として活躍した。その後ブレーブスに移籍したが、99年キャンプの身体検査でリンパ腫が発見された。そして1年間の治療期間を経て2000年に復帰したものの、03年シーズン終了後に再発。再び治療に専念し、 04シーズン途中でエンジェルスとマイナー契約を結び、メジャー最復帰を果たしていた。

  「毎日が楽しいよ。今は毎日身体を鍛えてシーズンの準備をしているだけだ。若い選手たちと練習をすることは大変だけど、その分自分も鍛えられるからね」

 すでに母国ベネズエラでは国民的英雄になっているガララーガ選手。それでも練習中はラテン系の若手選手たちと屈託なく和気あいあいと汗を流していた。グラウンドにいることが心から楽しそうに見えた。

 とはいえ、すでにメジャーで十分に実績を残した選手。ましてや健康面に不安を残しているだけに、ゆっくり引退生活を楽しんだ方がいいのではと、取り越し苦労もしたくなる。

 「確かにこれまで2度癌に冒された。だからこそ世の中の癌と闘う人たちに、癌は克服できるし、再び今まで通りの生活ができるというメッセージを伝えたかった。それと個人的にも通算400本塁打まで1本に迫っているからね」

 ガララーガ選手の言葉を聞き、自分の浅はかな考えが恥ずかしくなった。2度に渡る癌との闘病生活を克服したからこそ果たすべき挑戦。ガララーガ選手1人というよりも、彼の後ろにいる世の中の癌と闘う人たちに捧げられた壮大な挑戦だったのだ。現在の彼の姿は、我々には想像できないほどの勇気を、癌と闘う人々に与えているのだろう。

 「開幕メジャー入りするチャンスは十分にあると思う。もしできなかったら? 家族やエージェントと話し合いながら決めることになるが、たぶんこれが潮時だと思う」

 まさに野球人生を賭けたガララーガ選手の戦い。果たして開幕ロースターに残ることができるのか。通算400号達成のニュースを聞ける日が来るのを、ただただ待ち望みたい気持ちで一杯だ。

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