電車に乗っていたら、松井秀喜が赤いヘルメットをかぶっている缶コーヒーの広告を見た。
松井といえば星稜、巨人、ヤンキースと青、黒、紺といった青系のヘルメットをかぶっているのに見慣れていたから、なんだか珍しかった。これはひょっとして来年の移籍への地ならしか……そんなことまで思ってしまったのである。
その松井、今季終了後にフリーエージェント(FA)になるが、現在のところ「松井株」は右肩上がりを続けている。
正直なところ、6月あたりはどうなるかと思った。インターリーグ期間は出番がほとんどなく、打席に立っても自分のリズムが作れない。そうした悪条件にもかかわらず、シーズンが終わってみれば打率.274、本塁打28、打点90という数字を残したのは、誰かのセリフだが「天晴れ!」だ。
しかも9月は好調だったこともあり、アメリカ各地のメディアは、来季の新戦力に松井を考慮せよという論調を載せるようになった。それはなぜか?
打者の評価指標である“OPS”を巡るアメリカの状況。
現在、アメリカでは出塁率と長打率を足した「OPS(On-base plus slugging)」が打者の評価基準として重視されている。特に新聞記者のブログ、各チームの熱烈なファンによるブログでは、OPSを使った分析が大流行である。
こうした「MLBブログ論壇」は実際に影響力を持ちつつあるが、今季の松井のOPS.876は、論壇では高く評価されている。一流打者の目安と言われている.800を大きく上回っているからだ。
この数字をライバルであるレッドソックスのDH、デイビッド・オルティスと比較してみよう。
| 出塁率 | 長打率 | OPS | |
|---|---|---|---|
| 松井秀喜 | .367 | .509 | .876 |
| オルティス | .332 | .462 | .794 |
オルティスの独特の存在感は無視するとして、松井の方が数字上は圧倒的に優秀なのだ。(リンクに飛ぶと、プロになってからの数字が一目瞭然。巨人時代のOPSがすごい!)
http://sports.espn.go.com/mlb/players/stats?playerId=5372
OPSを目安に野球素人のMBAホルダーが球団を運営する。
現在のアメリカではOPSなどの数字に加え、そこに「年俸」という要素が加わっている。要は給料に見合った働きをしているか? ということだ。
松井の今年の年俸は1千3百万ドル(約11億7千万円)。マリナーズのDH、ケン・グリフィー・ジュニアの今季の年俸は2百万ドル(約1億8千万円)だから、いかに高給取りか分かるだろう(ちなみにグリフィーのOPSは.735)。
そして興味深いのは、オルティスと松井の年俸はまったく同じなのである。どちらが費用対効果がいいか、火を見るよりも明らかで、市場では松井は「売り手」となる。
なぜ、こうした数学的なアプローチが流行になったかというと、現在、メジャーリーグの経営陣には野球経験はほとんどないが、そのかわりMBA(経営学修士)を持ち、経営学的なアプローチで選手を分析する若手が増えているからだ。
松井は数字だけでなく、チームや野球に対する態度も真面目だから、そうした数字に表れない部分でもプラスアルファがある。
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筆者プロフィール
生島淳
1967年気仙沼生まれ。早大卒。NBAやMLBなど海外ものから、国内のラグビー、駅伝、野球など、全ジャンルでスポーツを追うジャーナリスト。小林信彦とD・ハルバースタムを愛する米国大統領マニアにして、カーリングが趣味(最近は歌舞伎に夢中)。
著書に『慶応ラグビー「百年の歓喜」』(文藝春秋)、『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)、『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)など。『BSベストスポーツ』(NHK・BS1毎週日曜21:10~)、『生島淳のアクティブスタイル』(TBSラジオ毎週日曜正午~)にも出演中。































