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韓国の格闘技界に見え隠れする危うい魅力。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2004/07/29 00:00

韓国の格闘技界に見え隠れする危うい魅力。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 2004年夏、韓国の格闘技界は高度成長の真っ只中にいる。6月26、27日には“韓国版PRIDE”グラジエーターFCが旗揚げ。観客数こそ低調だったものの、好勝負が続出して韓国の総合ファンを喜ばせた。韓国初の大規模な国際大会に最初は嫉妬心を抱いていた地元の総合格闘家や関係者も、国際戦で奮闘する同胞の闘いを目の当たりにすると、俄然やる気になったと聞く。もともと韓国は格闘技が盛んなお国柄。とはいえ、すんなりと総合が受け入れられたわけではない。「打撃ではテコンドー、組み技ではシムル(韓国相撲)など、それぞれ立派な競技がある。なのに、なぜそれらを混ぜ合わせなければならないのか」という意見が総合進出の動きに歯止めをかけてしまった。

 そうした流れを変えたのは、衛星放送による日本の格闘技イベントのレギュラー放送だった。中でもPRIDEの反響は絶大。エメリヤーエンコ・ヒョードルらが織りなすハイレベルな闘いは、混ぜ合わせの素晴らしさを十分すぎるほど伝え、韓国の格闘技関係者の単なる先入観に過ぎない誤解を解いた。おかげでグラジエーターFCのリング上からアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが挨拶すると、とても初めて韓国の地に足を踏み入れたとは思えないほど熱烈な歓迎を受けた。現地の格闘技ファンにとって、総合は最初からインターナショナルな格闘技だ。その証拠に素晴らしい動きや勝ち方を見せた選手には国籍に関係なく声援や拍手を送っていた。大昔、キックの興行で韓国人選手に勝った日本人選手の控室に怒った群衆が殴り込んできたという逸話は、忘却の彼方に消えようとしている。

 その一方で高度成長期ならではの歪みも感じられた。昨年以来、いったいいくつの団体が大きなアドバルーンを揚げながら消えたり、金銭的なトラブルを起こしていることか。グラジエーターFCにしても、昨年11月に旗揚げする直前に中止となったKOキングに協力した日本の関係者が仕切り直しをして実現したものだ。7月17日に予定されていたパンクラスの韓国大会は、韓国側のイベント会社の約束不履行で中止となってしまった。

 好意的なファンの視線と不安定な興行基盤。実際に蓋を開けてみなければ何が起こるかわからないところに、韓国格闘技界の危うい魅力は隠されている。

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