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川尻達也はこうやって潰された……。
『STRIKEFORCE』絶対王者の貫禄。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2011/04/27 10:30

川尻達也はこうやって潰された……。『STRIKEFORCE』絶対王者の貫禄。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

ギルバート・メレンデス(写真左)は過去、2006年大晦日のPRIDEで川尻達也と対戦。その時は2R、判定勝ちを収めている

 試合が終わって真っ先に思ったのは「悔しい!」ではなく「強い!」だった。

 4月9日、アメリカ・サンディエゴで開催された『STRIKEFORCE』のセミファイナル。ギルバート・メレンデスが持つ同団体のライト級タイトルに挑戦した川尻達也は、1ラウンド3分14秒、レフェリーストップによるTKOで完敗を喫した。昨年の青木真也に続いて、日本人トップファイターがメレンデスに連敗。悔しくないわけがないのだが、それ以上にメレンデスの強さに感服させられた。

 開始20秒で、試合の流れは決まった。メレンデスの右フックで、川尻がガクッとヒザをつく。あとはもう、王者の一人舞台だった。首相撲からのヒザ蹴りが顔面を捉える。テイクダウンし、バックに回って後方から拳を突き上げる。最後はグラウンドで顔面にヒジ打ちを4連打。つけいる隙はまったくなかった。

相手のスタイルを消す、王者の柔軟な試合運び。

 驚いたのは、メレンデスがあくまで冷静に試合を組み立てていたことだ。“怒涛のラッシュ”に見えて、攻撃のほとんどがカウンターだったのである。ファーストヒットの右は川尻の左フックに合わせたもの。テイクダウンは蹴り足を掴んで成功させ、フィニッシュも川尻のタックルを潰すところから始まった。

 メレンデスは、川尻の好戦的なスタイルを研究しつくしていたのだろう。打撃で相手に金網を背負わせても、あわててラッシュすることはなかった。腰を落とし、懐を深くした構えで距離を取ったのだ。劣勢に追い込まれても、川尻は必ず反撃してくると読んでいたに違いない。だから、タックルをいとも簡単にカットすることができた。どれだけ窮地に追い込まれても攻めようとする川尻のファイターとしての個性を、メレンデスは完璧に利用したといっていい。

 青木と闘った時のメレンデスは、寝技を徹底的に警戒し、深追いしないことで確実にポイントを稼いで判定勝ちを収めている。つまり勝ち方に違いこそあれ、青木戦も川尻戦も“相手のスタイルを読み切っての完封勝ち”という根本的なスタンスは同じだった。逆にいえば、同じ“理”をもってまったく異なる闘い方ができるということでもある。メレンデスは必要に応じて5ラウンドをフルに使うことも、1ラウンドでフィニッシュすることも可能なのだ。彼は日本の格闘技ファンが想像しえなかったほどレベルが高く、幅が広く、奥深い選手だったのである。それが“格闘技の首都”アメリカでベルトを巻く者の強さなのだろう。

【次ページ】 勝利によって紡がれた“シーザー軍団の物語”。

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