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逆境を見事に克服した本山哲が異例の挑戦。 

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大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2004/09/09 00:00

 8月1日開催された全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第5戦で、本山哲が優勝した。本山は昨年、星野一義率いるインパルに所属しシリーズチャンピオンになった。同時に全日本GT選手権でもシリーズチャンピオンとなって国内レースの頂点に立ち、「来年はF1に挑戦する」と宣言した。

 しかしF1チームとの交渉は難航した。F1参戦メーカーとの関わりを持たない本山のようなドライバーが割り込めるチームは限られており、当然そこでは持ち込み資金が求められる。その駆け引きを2月半ばまで続けたものの、結局はF1参戦を断念し今年も国内レースを戦うことになった。

 このとき本山は、敢えて昨年所属したチャンピオンチームであるインパルを離れ、これまでチャンピオンを出したことのないチーム5ZIGENと契約を結んだ。F1進出が実現しなかったのは残念だったが、この移籍は外野の興味をかき立てた。移籍の裏にあったはずの様々な事情はともかく、前年のチャンピオンが、決して十分な戦闘力を備えているとは言えない新天地に移るという、あまり前例のないケースだったからだ。

 開幕時点で、本山の置かれた状況は大方の予想通り厳しいものだった。しかし、チャンピオンの加入によってチームの雰囲気は外から眺めても変わったように感じた。そして本山の成績は、レースを追うごとに上がっていった。予選の順位は10位、5位、4位、7位、2位。セッティングに苦しんだ第4戦はともかく、右肩上がりの成績だ。そして第5戦ではついに決勝で優勝を遂げた。

 そのときわたしは、かつて成績が伸び悩むフェラーリにミハエル・シューマッハーが加入し、徐々にチームの戦闘力を引き上げてついに他のライバルを寄せ付けずF1グランプリの頂点に君臨する現在の地位についたことを思い浮かべた。本山が今年やってのけたのは、シューマッハーと同じ仕事ではないか。

 今回成し遂げられた本山の優勝は、多くの若い選手に希望をもたらすに違いない。優れた選手は与えられた条件をよりよい状態へ育て、あるいは不足しているものを引き寄せてレースに勝つし、勝てるのだ。それを知らしめた本山は、国内レース界に対しF1進出に匹敵する貢献をしたのだと思う。

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