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突然の横浜移籍、寺原隼人は甦るか。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2007/01/11 00:00

 「うちが優勝できるかどうか、鍵を握るのはあいつじゃないのかな」

 今シーズンの途中、ソフトバンクの杉本正投手コーチがそう言って指を差したのが、寺原隼人だった。

 '02年、日南学園高からドラフト1位でホークスに入団。この2年間、一軍での勝利をあげられなかったが、今季は光明が見えた。プロ入り初完封勝利をあげ、西武とのプレーオフでは先発を任されて、第2ステージ進出にも貢献した。

 横浜・多村仁とのトレードが決まったのは、大物の片鱗を見せた矢先だった。相手は3割、40ホーマーを放ったこともあるWBC代表だ。間尺に合わないトレードとも言われたが、プロ5年で16勝しかあげていないのだから仕方がない。

 「横浜ファンから見れば割に合わないと思われるかもしれない」と、寺原本人も謙虚に語る。地元九州出身のドラフト1位を放出することに、王貞治監督は断腸の思いだったろう。「1対1のトレードだ。横浜は君を買ってくれている。新天地で頑張れ」と言って送り出した。

 ただ、王監督の言葉は単なる励ましだけではない。横浜の編成担当、亀井進は、「ホークスの豪華投手陣の中では目立たないが、環境が変われば大化けする」と口にした。そして、最も期待をかけているのが、新監督の大矢明彦だ。寺原が今季、965日ぶりに勝利をあげた4月13日のロッテ戦をたまたま見ており、「なぜ今まで勝てなかったのか」と感じていた。多村との交換要員として、いの一番に寺原の名前をあげたのも大矢である。決まった後は「まさかくれるとは思わなかった」と漏らしていたほどだった。

 「嫁さんから『横浜ってすてきな街なんでしょ。行きましょうよ』と明るく言われて、それで救われました」と話した寺原。ホークス選手会長の斉藤和巳からは「明太子がシュウマイになっただけ。肉好きのお前には向いている。交流戦の時には横浜の案内を頼むぞ」と冗談交じりに励まされた。

 寺原はルーキー時代、キャンプ地の高知で、松坂大輔に偶然会ったことがある。挨拶すると「ドラフト1位の重圧に負けるな」と言われた。最近、その言葉が妙に思い出される。重圧を忘れ、のびのび投げれば、甲子園で154キロを出したあのころの姿が甦る可能性は十分にある。

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