SCORE CARDBACK NUMBER

早いレフェリーストップは
試合の魅力を損なうか。
~ボクシング、逆転KO減少の理由~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2009/11/26 06:00

早いレフェリーストップは試合の魅力を損なうか。~ボクシング、逆転KO減少の理由~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

'83年9月、関博之戦では両者9度のダウンの末、ジャッカル(右)が6回KO勝ちを収めた

「最近のボクシングは(レフェリーの)ストップが早すぎて面白くない。今、俺が現役だったら、みんなKO負けにされちゃいますよ」

 先頃、30年近く前に活躍した“逆転KO男”ジャッカル丸山さん

(写真右)

を取材したら、こう嘆いていた。古くからのファンは即座に納得するに違いない。およそ洗練とはほど遠い“喧嘩ボクシング”で、古口哲や関博之らの元アマチュアのエリートを撃破した。KO寸前のピンチに耐え、劣勢をひっくり返す。倒し倒されの激闘の果て、最後に勝者として手が上がるのはジャッカルだった。何度、逆転KO劇で後楽園ホールを沸かせたことだろう。

ピンチになるとすぐTKO……これでは面白くない!?

 そんな人の目から見れば、今のボクシングが物足りないのも仕方あるまい。絶体絶命のピンチをはね返す勝負強さを発揮しようにも、今ならピンチに陥った時点で即、主審がTKOを宣告してしまう。

 早めの試合ストップは近年の世界的傾向である。言うまでもなくこれは事故防止策の一環であり、昔ほどタフに戦えなくなった現代のボクサーをリング禍から救うための窮余の策でもある。これが近年のボクシング人気の下降に少なからず影響し、ジャッカル型ボクサーの活躍の場を狭めているのも否定できない。

「ボクサーの利益と観客の利益のどちらを優先させるかは、ボクシング永遠の課題です」と語るのはベテラントレーナーの石井敏治氏。「先日のパッキアオ対コット戦の最終回、あそこで止めなければもっと派手なKOになってお客さんは喜んだかもしれない。でも、今は昔のようにとことんやらせる時代とは違う。スポーツは時代とともに進化していくもの」とあのストップを評価する。

無謀な殴り合いではなく、“技術で魅せる”戦いを。

 選手を致命的なダメージから守り、同時にボクシングの魅力を追求する――この2つは両立できるだろうか。

 ひとつには、ボクサーを育成する人たちに、テクニック重視の指導を徹底することを期待したい。精神論に傾き、殴り合いで一部のファンを満足させるのではなく、しっかりとした技術の裏付けがあるボクシングを見せてほしい。これによって観客を引きつけることは不可能ではない。当然、観客に対しても意識改革を促す努力が必要だろう。KOはボクシングの華ではあっても、このスポーツの魅力はそればかりではない、と。

■関連コラム► 「本物」という新機軸。ボクシング復興はなるか。 (08/01/31)
► 『リング禍』を避けるために。 (06/10/10)

ページトップ