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病を克服して6連勝。
全米が注目するグリンキー。
~心の病から復帰したエース~ 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2009/06/01 06:00

 社会不安障害。あまり聞きなれない病名だが、対人恐怖症やあがり症と言い換えれば分かりやすいだろう。人前で極度の緊張や不安を感じ、そういう場面を回避するようになるというこの病を克服して、今シーズン飛ぶ鳥を落とす勢いなのがロイヤルズのザック・グリンキーだ。

20歳でメジャー昇格した未来のエースが……。

 5月4日のホワイトソックス戦に先発し、6安打無四球で今季2度目の完封勝利を収め「今年のベストゲームになるだろう」と相好を崩したグリンキー。開幕6連勝および54奪三振はもちろん両リーグ単独トップで、6試合を終えた段階で防御率は驚異の0.40。この成績を上回るのは、過去にF・バレンズエラ('81年・ドジャース)とW・ジョンソン('13年・セネタース)だけ。新聞やテレビなど全米のメディアはこぞって“ベストピッチャー”の見出しとともに彼を採りあげ、スポーツイラストレイテッド誌でも表紙を飾るほど一躍その名は広まった。

 才能は早くから認知されていた。'02年のドラフトにおいて1巡目(全米6位)で指名されて入団。'04年には弱冠20歳でメジャーに昇格して8勝を挙げ将来のエースを嘱望されたが、投げることを苦痛に感じ、野手かゴルフ選手にでも転向したいと家族に打ち明けるようになった。やがて野球場に足を運ぶことすら億劫になり、'06年2月には首脳陣に野球から離れたいと懇願。全米で1500万人もの人々が患うといわれる社会不安障害と診断されて2カ月間の完全休養を余儀なくされ、一度は野球人生の窮地に立たされたのだった。

地道な治療の果て、ついに花開いた才能。

 幸いにもカウンセラーの指導と投薬治療が奏功して、マイナー調整の後にメジャーに復帰。'07年は7勝、昨年は13勝と着実にステップアップしたグリンキーに対し、今年1月にチームが4年総額3800万ドルの好条件を提示したのは期待の現われだった。もともと多彩な球種が身上だが、今年のスプリングトレーニングではチェンジアップに磨きをかけて、その才能を大きく開花させた。

 方々から“ベストピッチャー”と賞賛されても「3年やってこそ、その称号にふさわしい」と心憎いほど冷静さを失わない。誰もがかかり得るこころの病から見事に立ち直ったグリンキーの活躍を見て、元気づけられるのも悪くない。

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