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CLインテル戦の大勝は必然か?
新監督がシャルケにかけた「魔法」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2011/04/12 10:30
プロ選手としての経験はないが、52歳で監督歴28年を誇るラングニック
新監督による「心の変化」と「ピッチ上での変化」。
新監督がもたらしたものとしてまず挙げるべきは、選手たちの「心の変化」だ。
内田は、練習中にただよう雰囲気が変わったと感じている。
「監督が代わって、これまでは使われなかった選手が使われるようになった。今は、アピールすれば、頑張れば、試合に出られるんじゃないかという雰囲気があると思います」
マガト前監督とそりが合わず、たびたび移籍を志願していたファルファンの態度の変わりようも興味深い。
「僕の契約は2012年まで残っている。それに(契約延長についても)クラブと話しているんだ。シャルケ残留は第一の選択肢なんだ」
もちろん、ラングニックはピッチ上でも「変化」をもたらした。彼は、選手たちに縦への意識を植え付けたのだ。
注目すべきは、シャルケの4点目。
後半13分にDFラインにいた内田にボールがわたる。その瞬間にチームのギアが入った。
トラップした内田は、グラウンダーの速いボールを前線に送る。同時に、右ボランチのフラード、右MFファルファン、FWエドゥが前線に向かって走り出す。ラウールだけが自陣方向に下がり、ボールを受けられる位置へ。ラウールがダイレクトでフラードへボールを落とす。すでにスピードに乗っていたフラードはファーストタッチで相手DFを置き去りにして、右サイドを駆け上がっていく。ゴール正面に向かってエドゥは前進を止めず、右サイドにいたファルファンはこぼれ球につめるために右サイドから中央に入っていった。
結局、フラードが送ったスピードのあるクロスは、インテルのCBラノッキアの足にあたり、ゴールに吸い込まれた。ラノッキアがオウンゴールを献上するまで、インテルの選手たちはボールに触れることさえ出来なかった。
少ないタッチ数で素早く縦に展開する攻撃が浸透しつつある。
ゴールの起点となった内田は、「前に運ぼうというボールが活きたことはすごく良かった」と振り返りつつ、直前に行なわれたザンクトパウリ戦で経験した同様のシーンがヒントになったと明かした。その上で、ラングニック監督がチームにもたらした変化をこんな風にとらえている。
「今日(の試合を)見ても、1タッチ、2タッチで崩していくパスが多くなってきている。そういうのがチームに浸透してきているのかな」
ラングニック監督の多彩な練習メニューの中に、こんなものがある。ピッチの横幅だけを狭くした状態で、DFラインから全ての選手が1タッチでフィニッシュにつなげるメニューだ。
練習の意図は明確そのもの。少ないタッチ数で、縦に素早く展開していく攻撃を、ラングニックは求めているのだ。