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ソフトバンクを支える
生活のかかった打撃術。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2005/04/14 00:00

ソフトバンクを支える生活のかかった打撃術。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 プロ入りして16年、開幕スタメンをスコアボードで確かめて、ソフトバンクの宮地克彦は「よくぞここまで」という感慨を覚えていた。一昨年のオフに西武を解雇され、トライアウトを受けてダイエーに入団。昨年は規定打席にこそ足りなかったが、3割1分というこれまでの最高打率をマーク。年俸も2000万円アップした。

 しかし、オフにその喜びに浸る余裕はなかった。王貞治監督はソフトバンクの外野陣について、キャンプの時から「誰も決まっていない。競争に勝ち抜いた奴を使う」と明言。FAで大村直之を、トライアウトで井出竜也を獲得していた。さらに、プレーオフの走塁ミスでトレード要員に挙げられた柴原洋も個人トレーナーを雇い、汚名返上に燃えていたからだ。

 それだけに「家族で行く寿司屋が回転寿司からカウンターだけの店になった」ことぐらいが、生活の変化。「年俸が上がった余裕よりも、何とかいまの生活を維持したい」という思いが、練習に駆り立てた。「4歳になる娘と一緒に寿司屋でお祝いをした時の嫁さんと娘の嬉しそうな顔は忘れられない」とも言っていた。センスがありながらのんびり屋だった宮地は、家族の姿に頑張らねばという欲を出すようになったのだ。

 宮地と福岡には因縁がある。尽誠学園のエースとして甲子園に出場した宮地が、夏のベスト4で敗れたのが仙台育英だった。この時の仙台育英のエースが、後にダイエーに入団して外野手に転向した大越基だった。その大越がダイエーを解雇され、空いた外野手の1枠に宮地は滑り込んだのだ。また、プロで野手転向した入団4年目、フレッシュスターで一軍入りのきっかけとなるヒットを放ったのも福岡ドームだった。

 王監督は宮地のバッティングを「生活のかかった打撃をする」と評する。その打棒は開幕2戦目の日ハム戦で披露された。この試合、宮地は3安打し、内1本は勝ち越し打、それも渋い内野安打だった。宮地も「1本目のヒットでリラックスできました。2本目は僕らしいヒット、きれいなヒットはいらないけれど、ボテボテでも塁に出られれば満足なんです」と嬉しそうに語っていた。王監督も「生活のかかったきたないヒットだから頼りになる」と、さらにその評価を高めている。

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